
socotsu
@shelf_soya
2025年10月20日
記号化される先住民/女性/子ども
石原真衣
心に残る一節
"暴力と葛藤し、拮抗する定型の綻びやノイズ、後ろめたさの情動は、圧倒的な差別の暴力の前では、「不十分」な批評性とみえるかもしれない。だが、ジュディス・バトラーが憎悪言説における中傷の発話に呼びかけの力が内在していると示したように、誰もが、敵にみえたり、貶めてもいい対象と思えたり、自分にとって価値はないと判断されたりする他者と、実のところ、つながりあう関係性を持たざるをえない。したがって、ヘイトを生産する側の「私」は、自らが認識しているのとは異なったかたちで、対象と深く関わり合っているのだし、同様に、たとえ見えていないとしても、否定的に関係する他者と、私たちは呼びかけの力と傷の両義性によって、互いにつながっている。こうした関係性がある以上、他者に向かう暴力は、翻って、自らを損傷する力学を生成し続けてしまうのである。"
内藤千珠子「フィクションの暴力とジェンダー:登場人物としての「アイヌ」から考える」 p.118-119