
nornacum
@nornacum
2025年10月24日
読み終わった
写真集
平和
広島
反核
核兵器
長い間、広島の原爆資料に向き合ってこられた土田ヒロミさんの写真集。広島平和記念資料館の所蔵品のうち約500点をモノクロ写真で淡々と、キャプションを添えて並べている。
いま記念館には2万点ほどの原爆資料が所蔵されているそうだけれど、そのひとつひとつに物語がある。物語があるはずです。収蔵品のなかには、収蔵受け入れの経緯や寄贈者の名前がわからなくなっているものもあります。あるはずの物語が時の流れのなかで剥落し、空白となってしまった資料もあるわけです。写真は、その失われた物語をどうにか過去から呼び戻そうとする必死の試みなのだろうと思います。淡々としているけれど、その淡々さは、撮影者の物語を写し込まないようにしなくてはならないという、歴史の厳密な要求に従ってのものです。だから、一枚一枚写真に目を凝らして最後まで見ていくのは辛い。そこにある物語/物語の不在の痛みとともに、この写真集を作成するにあたって尽力された方々の痛みも、見えないところに感じざるを得ないからです。
被爆80周年に際して発刊された写真集だけれど、90年、100年と、アーカイヴが存在する限り、継続的にこういう本は作られてほしいし、原爆の残酷さと同時に、時の経過の残酷さとそれに抗うひとたちの苦闘も、記録にとどめてほしいと思います。この本が、NYやモスクワ、ロンドン、パリ、北京のような、核兵器保有国の書店に並んだらいいなとも思います。

