
nornacum
@nornacum
- 2025年11月3日
宗教・エスニシティ丸山里美,北田暁大,山根純佳,岸政彦,稲場圭信,筒井淳也読み終わった宗教日系社会学移民難民宗教・エスニシティをテーマにした巻。 宗教と移民はそれぞれ別立てにしたほうがいいような大きなテーマだと思うけれど、一巻にまとめられてしまったのは、ひとつに、日本における宗教社会学の相対的な層の薄さがあるんじゃないかと思う。巻末でこそ「宗教二世」の問題が取り上げられてはいるけれど、宗教者や帰依者、その周囲の人々のナラティヴや機微に立ち入るようなデリケートな研究がこの本でも見られない。「日本社会における宗教コミュニティの生き残り方、サヴァイヴの模索」、最終的には「宗教に社会資本としての役割を担わせる」みたいな、ある意味安直な着地点に誘導させられてしまってる気がする。それはそれで重要なのはわかるけれども、もはや到底そんなものを社会に実装できるほどにこの国に宗教が根を張っていないように思う。ぽつりぽつりと成功の事例があったとしても、宗教が日本社会における広範な社会資本に育つなんて、現状とても想像がつかない。 こういう議論をしたいのならせめて、宗教が(良くも悪くも)どのようにメディアやネットで表象されてきた/表象されているか、国家が宗教をどのように利用してきたか/利用しているか/利用しないでいるか、その細密な史的分析とセットであるべきだと思う。 - 2025年10月24日
読み終わった写真集反核平和広島核兵器長い間、広島の原爆資料に向き合ってこられた土田ヒロミさんの写真集。広島平和記念資料館の所蔵品のうち約500点をモノクロ写真で淡々と、キャプションを添えて並べている。 いま記念館には2万点ほどの原爆資料が所蔵されているそうだけれど、そのひとつひとつに物語がある。物語があるはずです。収蔵品のなかには、収蔵受け入れの経緯や寄贈者の名前がわからなくなっているものもあります。あるはずの物語が時の流れのなかで剥落し、空白となってしまった資料もあるわけです。写真は、その失われた物語をどうにか過去から呼び戻そうとする必死の試みなのだろうと思います。淡々としているけれど、その淡々さは、撮影者の物語を写し込まないようにしなくてはならないという、歴史の厳密な要求に従ってのものです。だから、一枚一枚写真に目を凝らして最後まで見ていくのは辛い。そこにある物語/物語の不在の痛みとともに、この写真集を作成するにあたって尽力された方々の痛みも、見えないところに感じざるを得ないからです。 被爆80周年に際して発刊された写真集だけれど、90年、100年と、アーカイヴが存在する限り、継続的にこういう本は作られてほしいし、原爆の残酷さと同時に、時の経過の残酷さとそれに抗うひとたちの苦闘も、記録にとどめてほしいと思います。この本が、NYやモスクワ、ロンドン、パリ、北京のような、核兵器保有国の書店に並んだらいいなとも思います。 - 2025年10月10日
貨幣の哲学新装版エマニュエル・レヴィナス,ロジェ・ビュルグヒュラーヴ読み始めた - 2025年10月9日
- 2025年10月9日
プロティノスの認識論岡野利津子読み始めた - 2025年10月8日
法の精神 中モンテスキュー,稲本洋之助,野田良之読み終わった人種主義フランス哲学哲学哲学・思想思ったより読みやすいように感じて、はじめのうちはちょっと舐めていたモンテスキュー。この巻は後半がしんどくて、やっと読み終えました。 前半の人種主義的かつ奴隷制に関する記述は、やっぱりいろいろと問題があるのは間違いなく、パーシヴァル・エヴェレット『ジェイムズ』でモンテスキューが指弾されるのは仕方がないし、おそらく克服すべき「現代の西欧人種主義」の根っこに限りなく近いところにあるテクストのひとつだと思う。 - 2025年10月8日
- 2025年10月7日
三八九集―山頭火遺稿 (1977年)大山澄太,種田正一読み終わった俳句山頭火自由律「三八九」は昭和6~8年に、断続的に山頭火が編集して発行した同人句誌。山頭火自身が手書きしたガリ版で数十部発行されたらしい。オリジナルは見たことがありません。たぶんほとんど残っていないと思います。こうやって活字化されてるのは幸いなことです。 句を互選して寸評しあう様子も面白いし、山頭火の周囲にいたアマチュアの俳人たちの作句感覚が知れて楽しい。山頭火の俳論、とくに、技術的な側面の記述もぽつぽつあって、興味深いです。第3号の付録だった井泉水らの座談録「山頭火を語る」は出色の山頭火論です。山頭火と放哉の本質的な違いをきわめて明確に語っててかなり納得みが深かった。これ、井泉水の著作としても活字化されてるのかな。短い記録だけれど、山頭火好きには読んでほしいなあ。 - 2025年10月6日
哲学の起源柄谷行人読み終わった哲学史ギリシア哲学まずこれは哲学史の体裁をとってはいるけれど、哲学史ではないです。断言してもいい。ほとんど、というか、まったく古典学や文献学の成果を拾っていない。だいたい、柄谷せんせいはそんなつもり、はなからない。 じゃあなにを目的に書いた本かというと、柄谷行人が理論化した交換様式論のリアルな歴史への適用です。3つの交換様式のトリニティを弁証法的な枠組みに組み込んで(恣意的に)歴史を考え、イソノミア(デモクラティアと似ているようでそうではない、具体性がいまいち欠けた、ほぼほぼ想像によって見出される、「無支配」と訳された共同体)を、その弁証法的止揚としてぼんやり(可能性だけを)映しだす、という、まあそんな感じの本です。 面白いか面白くないかと問われれば、面白い本だと思う。騙されてみたい誘惑に駆られなくもない。 でも、もうわたしもそれなりに年齢を重ねて、こういう本にはアジテーションの要素ばかりが目につくようになって、眉に唾つけて読んでしまう。いや、まあ面白いですけれども。 - 2025年10月1日
哲学の起源柄谷行人読み始めた - 2025年9月30日
ディキンソン詩集(対訳)ディキンソン,E.,亀井俊介読み終わった対訳英米文学詩集辞書を引きながら、自分なりの訳を作りながら、そして亀井せんせいの訳と対照して、自分の読解のふがいなさを呪いながら、ふっと紅茶を飲んでいて考えたこと。 こういう感想は可笑しいかもしれないけれど。 私は映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』を思い浮かべたりしたのでした。この映画の登場人物イザベラは、貴族の血を継ぎながら妾の子であったために絶望的な貧困のなか捨て置かれ、孤児として生き、喘息を患い、わけあって貴族の世界に戻る。結婚させられ、高い塀に囲まれたお屋敷に暮らすようになる。物質的には恵まれているけれど、彼女はいつも小さく身をすぼめて生きている。黒い喪服のような服を着て、ほとんど家から外に出ることはない。外に出るのは、ごくたまに、彼女はお屋敷の裏門からすぐ近くの湖を、ひとり散策するときくらい。 ある日の散策の途次、彼女宛てに郵便が届く。その手紙にはたった一文が書かれているだけなのだけれど、その言葉が彼女の心を解放する。身を縮めていたぶん、心を小さくしていたぶん、得られた自由は大きい。これからも、彼女は貴族のお屋敷のなかで孤独に暮らすことだろう。しかし彼女は「白い服」を着る。映画のなかでは、自由と希望の象徴として、青い空を飛ぶ白鳥が2羽描かれる。エミリー・ディキンソンも「希望は鳥のようなもの」と書いている。 エミリーは、学校へ通った時期以外のほとんどをお屋敷のなかで過ごした。近所のひとも、たまに庭に白い服を着てたたずむエミリーの姿を見るくらいだったらしい。しかし彼女の魂も自由だった。イザベラとエミリーは、似ている。 - 2025年9月29日
ディキンソン詩集(対訳)ディキンソン,E.,亀井俊介読み始めた「雪花石膏の部屋で安らかにーー」という詩を、英語原文と対照しながら辞書を引き引き読んだりノートに写したりしていると、小さい音でBGM代わりにつないでたspotifyのオススメからLucky Kilimanjaro「RUN」が流れ始めました まさにこれが「Worlds scoop their Arcs」! - 2025年9月28日
もっと知りたい中国の書田中亮読み終わった中国史中国美術史書道史書道薄くて図版多めのヴィジュアル重視なムック本。「書体」と「書風」をきちんと切り分けて、大きな流れをまず提示しようというスタンスでわかりやすい。運筆のひじょうに細かい観察と叙述が取り入れられているところも特徴的で、石川九楊せんせいの影響を強く感じる。同じ著者が、同じシリーズで日本の書についても書いてるようなので買おうと思ってます。 - 2025年9月27日
三八九集―山頭火遺稿 (1977年)大山澄太,種田正一読み始めた - 2025年9月27日
鳥と雲と薬草袋梨木香歩エッセイ読み終わった地名旅記憶『西の魔女が死んだ』の梨木香歩さんによるエッセイ集。彼女の本はたいてい読んだ気がしていたけど、この本は読んでなかったらしい。西日本新聞に連載された地名にまつわるエッセイを編んだもの。どうりで目次を読むと、なじみのある西日本の地名が多いはずだ(新聞社から「西日本の地名多めで」という発注を受けていたとはいえ、時期的に東北の地名に触れるのは辛かった、という事情もあったらしい)。 「埼」(さき)、「鼻」(はな)、「谷戸」(やと)、「迫」(さこ/せこ/はさま)、「熊/隈/球磨」(くま)、「原」(はら/はる/ばる)のような、地名の構成要素について思いをめぐらしながら、軽妙な語り口で、自身の思い出や印象をさくさくと紡いでいく様が気持ちいい。もちろん読み心地にのせられるままに読み切ってしまうのも悪くはないけど、「連載時と同じように一日一篇と呼んで下されば」と作家が書いているように、徒歩の旅のごとくゆっくりのんびり読むのも乙っぽい。そういう読書のやり方もありますよね。 - 2025年9月26日
- 2025年9月25日
- 2025年9月25日
法の精神 中モンテスキュー,稲本洋之助,野田良之読んでる - 2025年9月25日
法の精神 上モンテスキュー,稲本洋之助,野田良之読み終わったまた読みたい古典同時代的哲学の劇場フランス哲学哲学哲学・思想岩波文庫政治学民主主義民主政パーシヴァル・エヴェレット『ジェイムズ』で、主人公がモンテスキューと対話するシーンがあって、気になって『法の精神』を読み始めました。面白い本です。比較制度分析を切り拓いた著作。法哲学的な本を想像して読み始めると肩透かしを食らいます。訳者のおかげもあって読みやすいし、やや構成が弛緩してはいるけれど(十数年かけて断続的に書かれた本らしいのでそれも仕方ない)、読みこむとずいぶん楽しい。 上巻では奴隷制をテーマとした一文があり、きわめて差別的な内容で驚きました。が、邦訳された文章を読むだけでは気がつかなかったけれど、そこは当時の典型的な黒人奴隷への差別意識に対するモンテスキューの痛烈な皮肉がこめられている部分らしい。『ジェイムズ』でのモンテスキュー批判は、ここについてではなく、彼の風土論、特に暑熱の厳しい地域に住む民族に対する優生論的/人種主義的目線に向けられたものみたい。その部分は中巻にあります。
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