
八玖
@rock5104
2025年10月31日

■■謹んでお譲りします。
講談社タイガ
読み終わった
梨さんの作品が読みたくて購入。
短編五本のアンソロジーだが、どれも面白かった。梨さんの「男性妊娠切腹ロマンポルノ」という宣伝文句に釣られてホイホイ購入したが、他著者の作品も好みで満足。
各短編には特に仕掛けは無いが、概要、後書き、QRコードなどで現実を侵食しようと頑張ってくれてはいるので、モキュメンタリー風味が好きな人はQRコードでサイトまで飛んで遊ぶといいと思う。その辺興味ない人でも普通に書籍だけ読んで短編集として楽しめます。
以下、各作品の感想。
「ギニービッグの瘡蓋」、安定の薄暗い忌避感、嫌悪感の漂う筆致にロマンポルノ、スナッフフィルムというインモラルな設定が加わって言うことなし。同著者の他作品と比べるとそんなに怖くはない(当然嫌な気持ちにはなれる)ので、好みが分かれるといえば分かれるかも。
「じゃんけんちゃん」はケンちゃんについての結末は予想がつくものではあったが、嫌な質感のある筆致は結構好み。
「観察記録」、霊感を譲るというテーマとしては一番好きかも。当初の後悔も消え失せただただ死にたくない一心でお譲り先を探すことになる生者の弱さ、悲しさ、身勝手さが良い。霊を喰う霊という設定は初見ではないが、時間をかけてゆっくりと捕食される描写がえげつなくて好き。
「にこにこ」は地下ドルのファンとして集まる死者、アイドルのキャラ付けとして霊感を譲られるという設定が素晴らしい。死者の手により無理やり笑顔を作らされるというのも理由がわからないし単純に不気味で最高。
「いないのと同じ」は「観察記録」より後ということもあって死者の変質を心配してしまったが、全体的に優しい雰囲気でよかった。もちろんそれだけでなく霊の描写は不気味で緊迫感があるし、終わり方も不穏で良い。