紫嶋 "都市 江戸に生きる" 2025年11月1日

紫嶋
紫嶋
@09sjm
2025年11月1日
都市 江戸に生きる
近世以降、日本最大の都市であった江戸について、城下町やその内訳である町方・寺社・宿場といった空間としての仕組み、そしてそこに暮らす人々の商いや生活の成り立ち方などについて丁寧に論述している新書。 特筆すべきは、筆者自身も強いこだわりを持っている視点…幕府や武家といった支配層の上からの視点ではなく、ある意味では非支配層ともいうべき民衆の側から見た、下からの視点で都市の有り様を分析していることである。それにより、生活空間としての江戸のあり方が、とても生き生きと血の通ったものとして立ち現れてくる。 本文は憶測に頼ることなく、様々な史料や数字を土台に書き上げられている一方で、「おわりに」の章に記された筆者の想いの丈の温かさに心打たれた。一部を引用する。 >江戸を生きた民衆たちは、(中略)けっして「名も無き民衆」ではない。一人ひとりが、権力者や偉人・英雄たちと同じように、生を受けて以来、かけがえのない名前を持ち、その後の人生を歩んだ実在した人びとなのである。 こう考える筆者だからこそ、民衆の視点に立つことを徹底しているのだろうと納得した。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved