
Sanae
@sanaemizushima
2025年11月3日
アーベド・サラーマの人生のある一日
ネイサン・スロール,
宇丹貴代実
読み終わった
すごくよかった。
ある日、パレスチナの子供を乗せたバスの衝突事故が起きるというノンフィクション。
戦争の問題ではなく、痛ましい交通事故からパレスチナ・イスラエル問題の中にいる人々の暮らしや考えに触れることができる。
分離壁のように民族で白黒つけられるものではなく、その中にはもちろん、シオニズムに反対のイスラエル人もいるし、イスラエル人から利権を得るパレスチナ人も出て来る。
タイトルにある名前はこの事故の犠牲者である父親の名前。
事故と並行して、ストーリーは父親の生い立ちに始まる。
アラブ人によくある従兄弟も兄弟のように親しい間柄のたくさんの家族、恋人、妻たち、そして事故に遭った子供たち、子供たちを乗せたバスの運転手、教師、救出者、医療スタッフ、事故を起こしたトレーラーの運転手など、さまざまな角度からこの事故を追っていく。
イスラエルが築いた分離壁があるため、パレスチナ人は自由に動くことができない。この壁の建設に従事した設計者や政府のことも書かれているため、救命援助が迅速に行われなかった背景なども、これによってよくわかるようになっている。
個人的には、イスラエル内での階級構造に触れているところも、入植地が増えている背景として、今のパレスチナ・イスラエルの問題についてまた理解がひとつ増えたように思う。
入植者であるモロッコから来たミズラヒのユダヤ人の存在。彼らは東欧系アジュケナジムからは蔑視されているが、土地を接収、移住して共同体を作ろうとする。そしてパレスチナの土地がどんどん縮小していく...
パレスチナに寄り添いつつも、批判や糾弾することなく淡々とストーリーが進んでいくので、とても読みやすかった。夢中であっという間に読んでしまった。また必ず読む。







