rkm @ All you need is 💙 "虹のヲルゴオル" 2025年11月3日

虹のヲルゴオル
実際に私が持っているのは文庫版ですが、発売当初に読んだ思い出の本です。その後引っ越しなどで一度なくしてしまいましたが、電子書籍化される前に古本で手に入れました。おそらく橋本治さんがお亡くなりになったときに思い出して読みたくなったその頃かもしれません。 紙での復刻は難しいと思います。なぜなら昭和ならではの価値観でいわばルッキズムについて橋本治さんが深層心理学的な(そんな難しい用語は一切使っていませんが)13人の往年の女優の人格を彼女たちが演じ上げた役柄を通じて分析しているからです。そして映画作品も。象徴的な男、女についても語っています。語義通りに読めば腹が立つ人は今ならば多いかもしれない。特にゲイに対する言い方は私もかなり腹が立ちます。今ならその表現がありえないと思うので。でも昭和はそんなものだったとも思いますし。 それでも10代の頃にここに挙げられているような名作のほぼすべてをテレビの(ときには短縮版の吹き替えだろうと)地上波放送で見ることができ、年末年始の深夜には片っ端から録画しまくって観ることができた時代に生きた私にとって、橋本治さんのここでの映画評、女優評はかなり膝を打ちました。かつて女性は女性の枠にはめられていたなかでも、それぞれがその枠にはまるだけで甘んじることなく、その人のさまざまな価値観で自我を形成して毅然と生きていた、そこが美しさもいう本質のところでは著者が言いたかったであろうことがわかる私個人としては30年前と変わらず好きな本です。 昭和のルッキズムについて語る本がいまも残っているのは価値があることだと思いますし。おそらく橋本治さんの深層心理学的な(と勝手に私は名付けてますけど、実際フロイトやラカンがやるようなことと言葉が砕けてるだけで似たようなものだろうから)エッセイの中でもこれはすごい部類のはず。当時何冊か読んでますけど、橋本治さんが亡くなったときに頭に浮かんだ本はこれだったので。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved