Jun Nagata "緑の資本論" 2025年11月7日

Jun Nagata
Jun Nagata
@nagata_jun
2025年11月7日
緑の資本論
緑の資本論
中沢新一
『緑の資本論』は、イスラームとキリスト教という二つの一神教的世界のあいだに横たわる「圧倒的な非対称」から、資本主義の本質を照射する思想的試みである。イスラームは「タウヒード(一)」の理念に基づき、利子を徹底的に禁じることで貨幣の増殖性を抑制し、貨幣を本来の交換と価値尺度の機能へと回帰させる。一方、キリスト教は三位一体説のもとで増殖を肯定し、資本主義と親和的な貨幣観を育てた。この非対称は、人間と野生動物の関係に象徴される近代の暴力的構造にも通じる。宮沢賢治はこの非対称からの脱却を構想した先駆者として登場する。イスラームは「神と貨幣の混同」を拒み、資本主義的無限増殖への批判を体現する倫理的・霊的システムであり、その存在自体が「生きた資本論」なのである。
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