碧衣 "ダークツーリズム" 2025年11月11日

碧衣
碧衣
@aoi-honmimi
2025年11月11日
ダークツーリズム
戦争や災害、病気や差別や公害といった土地の影の側面の悲しみの記憶を巡るダークツーリズム。 19世紀末、外国貿易の拠点港として栄えた小樽で大正13年に起きた爆発事故。近代化のために働き、亡くなった人に触れる展示や現地に慰霊の場もない。 栃木県の足尾銅山から流れた鉱毒の影響のため北海道に移住を余儀なくされ、”栃木地区”として土地を開拓した人々。そんな足尾銅山が現在も有害物質が下流に流れないための監視を続けているのには驚いた。 監獄食を食べ、コスプレを楽しみながら学びを得られる網走刑務所はダークツーリズムの理想形だと著者は語る。 西表島では多額の借金を背負わされ、各地から連れて来られた人々が島の内部でしか使えない地域通貨を持たされ危険な炭鉱の労働に従事させられた隔離と搾取の構図が本当に悪辣。 熊本の水俣病、ハンセン病、旧三井三池炭鉱の労働争議は近代化によって、公害の被害、優生思想の下の隔離、各種の労働災害や労働運動がもたらすコミュニティの亀裂などの負の側面だなと思わされる。 長年、繰り広げられた独立闘争が津波によって収束したスマトラ島のバンダアチェと同じ被害を受けたタイのプーケットとの復興のアプローチの違いは興味深い。 韓国の光州事件の直後に権力側によって消されようとした関連施設を住民が身を挺して守ったことから権力側の都合や意図で負の遺産を消そうとするのは許されないし、それらを残すことで戦争や災害の教訓や無知から来る差別をなくすことへの戒めにもなる役割を担うのは理解出来るが、負の遺産があることによって辛い思いをする人の気持ちを蔑ろにするのも違うと感じる。その辺をどう折り合いをつけるのかもこの先、大切なのではないかと思った。
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