
Ryu
@dododokado
2025年11月16日
ベンヤミン読解
ヴェルナー・ハーマッハー
読み終わった
ド・マンがベンヤミンを読んだらこうなるだろうなという感じで、これまで読んできたどんなベンヤミン研究とも違う、徹底して内在的に彼の思想を読み解いていく試みとして面白かった。歴史の天使でエモくなったりもしない。ただきわめて難解であることも事実で、それは読み解けないもの、解消されえないもののなかに彼の思想の可能性を認める本書のスタンスとも関わっている。冒頭の「雲という言葉──それが一つの言葉であるのなら」は「ベルリンの幼年時代」の自伝的記述のなかに後年の彼の言語哲学や歴史哲学を準備するものがあったことを、(半ば精神分析的な筆致で)表現の細部の一致や照応に着目しながらデリダのごとくアクロバティックに読み解いていく小論だが、近年のベンヤミン論は初期の言語論と後年の歴史哲学の間に断絶を見るものが多いなかで、彼の思想に一貫する言語(媒質としての言語)の捉え方を析出しえているのではないか、とも思う。言語が伝達可能性の伝達、だとか純粋な手段、あるいは「アフォーマティヴ」といわれるときに、そこにある固有の時間性を歴史・政治の問題としてどこまでも深く掘り下げていく筆致は丹念に追うとこちらが息切れしてしまうほどで読み応えがある。しかし、「アフォーマティヴ・ストライキ」の註でストライキは例外状態とは違う、と述べられていた箇所には、ならそれは具体的にいかにして可能なのかという疑問も残った。消化しきれていない箇所は無数にある。あとはやっぱり、ベンヤミンがかなりカントをラディカライズしていたということがわかりそこがめちゃくちゃおもしろい!
