
jirowcrew
@jirowcrew
2025年11月18日

荒野より新装版
三島由紀夫
ちょっと開いた
「それは私の心の都会を取り囲んでいる広大な荒野である。私の心の一部にはちがいないが、地図には誌されぬ未開拓の荒れ果てた地方である。そこは見渡すかぎり荒涼としており、繁る樹木もなければ生い立つ草花もない。
……
私はその荒野の存在を知りながら、ついぞ足を向けずにいるが、いつかそこを訪れたことがあり、又いつか再び、訪れなければならぬことを知っている。
明らかに、あいつはその荒野から来たのである。……
その意味は解せぬが、あいつは私に、本当のことを話せ、と言った。そこで私は、本当のことを話した。」
合理性の象徴である都市と、非合理の荒野と。
「あいつ」と呼び距離を置く。
そしていつかは迎えに行くからその「あいつ」。
本当のことは、都市に置き去りにされた荒野にある。