がみ "もうひとつのエデン" 2025年11月24日

がみ
がみ
@ottoto-dameda
2025年11月24日
もうひとつのエデン
もうひとつのエデン
ポール・ハーディング,
小竹由美子
・「あらすじ」より 遊星学の名のもと、実在の島マラガに起きたことを題材に、美しい詩的文体で描きだすある島の年代記。 ・「訳者あとがき」より 島民たちは移住先の提示もないまま立ち退きを迫られ、うち八名はメイン州立精神薄弱者養護学校に収容され、島の墓地まで掘り返されて遺骨もまた前述の施設付属の墓地に送られた。 ・P114 なんといってもその晩は、まるでイーサンをみんなの代表として送り出すことで、みんななんだか、宿なしの境遇を家から追い出せるような気が、なんだか貧しさを破産させてしまえるような気がしたのだ。その夜はみんながなんだかひもじさそのものを飢えさせてしまえる気がしたのだった。 ・P151 レモネード、そして夏じゅう氷がある、二十軒分より広い家、起伏のある広大な牧草地の草を刈るオランダ人の男たち、海の向こうからやってきたこの、とても愛らしくて彼に親切にしてくれる女の子、この夢、この奇妙な夢、このやたら大きくてごちゃごちゃした、アップル島からうんと離れた王国の夢。 裏表紙のあらすじに惹かれて手に取った一冊。 「マラガ島」では検索に出てこず、「Malaga Island」で検索すると詳細が出てきた。作中で触れている写真もおそらくこの写真のことだろうなというのがどんぴしゃで出てくる。 タイトルに"エデン"とあるように、物語は聖書に絡めて展開されていく。聖書に詳しくないので本当に大まかにしか拾えていないけど、島が破滅するきっかけとなるのが善意の白人の来訪なのは思いっきり皮肉が効いているなと思った。 地の文が難解だけど美しく、序盤で挫折するかもと思ったけど最後まで夢中になって読めた。なんなら実際にあったことを題材にしている割に叙情的すぎるかも??とも。 著者は「島の歴史はかつての住民とその子孫のものであって、自分が語るべきものではないと考えた」と訳者あとがきにあった。ここに関しては自分の中で折り合いがあまりついていない。だけどとてもいい本だったと思う。
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