
talia
@talia0v0
2025年11月24日
「ありのまま」の身体
藤嶋陽子
読み終わった
今月の読書会の本でした!今回はちょっと辛口です。
タイトルから想像できる通りルッキズムに関する本なのですが、あとがきに「作者はファッション研究を専門としており、美容整形やダイエットを研究対象としてきたわけではない。そのためこの本も学術的な専門書ではなく、あくまで筆者自身が抱えてきた、違和感や問題意識を共有することを目的としている本である」ことが書かれていました。
なので筆者が把握しているダイエットや美容整形の現状や、ボディポジティブムーブメントの功罪に関する筆者の個人的な意見が記されますが、現代を取り巻くルッキズムやそれに乗っかった商業戦略、それらの抵抗として生まれたはずのボディポジ運動に対する批判や課題といった視点は弱く感じました。正直そういうことは『はじめに』にちゃんと書いてくれないと需要と供給のミスマッチが起きてしまいますです…という気持ちになりつつ読了。
冒頭に「オシャレを楽しむこと、美容やダイエットに励むこと、そういったことが好きですか?」という問いがあって、筆者は「どちらともいえない」と答えてるんですけど、「好きですか?」じゃなくて「そういったことを“やらなければならない”と思いますか?」と聞かれたら強く“YES”と答える人なんだろうなというのが最後まで読んだ正直な感想。
おそらくなのですが、筆者自身がルッキズムによる葛藤を深く抱えながら問題について考えているが故に本書における筆者の主張が全体的に弱く、各章でインフルエンサーや誰かの鋭い言葉を引用して問題提起的に見せることでその主張の弱さを誤魔化しているようにも読み取れました。
それどころか、本文中で引用される2015年のルミネや2016年の資生堂「INTEGRATE」、2007年の大塚美容形成外科の広告について、ルッキズムの観点からもっと批判して良いはずなのにどう読んでも企業におもねってる(筆者にそのつもりはないかもしれませんが)ような説明になっており、ボディポジティブや「ありのまま」に対する葛藤以前に筆者自身のルッキズムの問題と本書における課題を切り離して論じれていないと受け止めざるを得ませんでした。
私自身、ボディポジティブや“「ありのまま」の姿を大切にする”というムーブメントについて概ね肯定しつつ疑問を抱えている人間です。“「ありのまま」の自分を愛そう”というけれど、社会に蔓延するルッキズムの規範やジェンダーステレオタイプ、異性愛規範などの問題が変わらないままボディポジティブを提唱するのは全ての問題やそれらに対する葛藤を「個々人の心持ちの問題に還元」にすることと変わりなく、ガス抜きや解消の場を失ったルッキズムが余計に強固に内面化されてしまうのではという思いがありつつ、具体的な解を持てていない(知りたい)と思って本書を読みました。第5章で書かれている「「ありのまま」で美しくあるために自分自身の素を磨き上げることが必要となったことは、かえって美容整形を選択する動機づけになっている可能性もある」「広告のなかで自然な美しさをみせる女性たちは、メイクや整形手術によってつくり込まずとも、素のままでも美しい女性たちであるのだから。そう思ってしまう自分自身と折り合いをつけていくことは、今の市場環境では決して容易ではない。」部分にも強く同意します。
だからこそ、「個々人の心持ちの問題に還元」することを本文中で批判しておきながら、「結局のところは、どのような方向性であっても自分の良き塩梅での「ありのまま」や「美しさ」を探りつづけ、《中略》自分自身と折り合いのつくところを見出していくしかない。」という『おわりに』の締め方はあんまりだと思いました。その結論が必ずしも誤っているとは思わず、筆者としても私が受け取るよりももっと前向きな気持ちでそう書いたのかもしれませんが、企業の広告に関する説明でも述べた通りルッキズムについての強い批判が本書の中にないため、読み手によっては問題を再生産したまま「個々人の心持ちの問題に還元」していると受け止めかねない不安があります。もしルッキズムに対する葛藤を切実に抱えながらこの本を手に取る人がいたとして最後の文を読んだら突き放されたように感じるのではないかとすら思いました。


talia
@talia0v0
ルッキズムの問題は多岐にわたると思います。
少し前に上野千鶴子の『アンチ・アンチエイジングの思想』を読んだのですが、上野千鶴子と比較するのも難易度の数段階上がる本を引き合いに出すのも嫌味な読者だと思われそうと思いつつ、例えば“老い”から来る見た目(身体)の衰えに関する批判に触れたい場合はこちらを読むことをおすすめします。
https://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=4033