
ユメ
@yumeticmode
2025年11月29日

十一月の扉
千葉史子,
高楼方子
読み終わった
心に残る一節
感想
個人的に大きな変化が訪れた今年の十一月、久々に子どもの頃から大好きなこの物語を読み返すことができてよかった。「どっちがいいかって迷うような事があっても、それが十一月なら、前に進むの」という閑さんの言葉に、何度読んでもそのたび「十一月には私も扉を開こう」と励まされている。
今回再読してみて、爽子という中学二年生の女の子の心情がこうも瑞々しく描かれていることに、改めて感嘆した。その年頃ならではの葛藤を抱えながらも少しずつ成長してゆく彼女の姿に、歳が近かった頃は自分を重ねながら読んでいたし、大人になった今でも当時に引き戻されるような感覚がある。それと同時に、爽子を温かく見守る周囲の大人たちにも共感できるようになっている。
爽子が自らの内から湧き出してくる物語をノートに綴ることによって前に進んでゆく、というテーマはたまらなく魅力的で、幾度読み返そうと色褪せることはない。それだけでなく、当初は「今」が終わることを恐れていた爽子が未来は素敵なものだと希望を抱けるようになったのは、十一月荘で出会った個性豊かな大人たちの影響でもある。自分が子どもであるうちに、大人にも子ども時代があったのだと真に想いを馳せることはなかなか難しいが、閑さんを筆頭とする十一月荘の人々が大人になる過程を楽しんできたのだということを知れたのは、爽子のこの先の人生にとって得がたい糧となるのだろう。

