
ジクロロ
@jirowcrew
2025年12月7日

金子光晴詩集
清岡卓行,
金子光晴
ちょっと開いた
さくらよ。
だまされるな。
あすのたくはへなしといふ
さくらよ。
世の俗説にのせられて
烈女節婦となるなかれ。
ちり際よしとおだてられて、
女のほこり、女のよろこびを、
かなぐりすてることなかれ、
バケツやはしごをもつなかれ。
きたないもんぺをはくなかれ。
(『さくら』)
「きたないもんぺをはくなかれ」
これはサリンジャーのいうところの
「靴を磨け」(『フラニーとゾーイー』)、に近い教え。
さくらはさくらであり、
太っちょのオバサマは太っちょのオバサマである
ということ。
それ以上でもそれ以下でもなく。
倫理と美意識はとても近い概念ではあるが、
それを他者に押し付けようとすると
最も醜い行為になりうる。
それをどう伝えるか、
この危うさを乗り切れる表現者こそが、
醜いものを直視し、それを素直な意味で
エレガントであるといえるのではないか。

