K.K. "ムシカ 鎮虫譜" 2023年6月30日

K.K.
@honnranu
2023年6月30日
ムシカ 鎮虫譜
卒業目前の音大生。モラトリアムの終わりに、音楽にご利益のある神社が島にあると聞きつけ、旅行に出る。あらすじから察せられるよう、レンタルビデオ店に転がるB級映画のような話。実際ストーリーはB級映画そのもの。しかし、井上真偽の筆致が虫虫のいやらしさを読者にありありと思い起こさせる。作中に実在の曲が多数出、それを聴きながら本書を読むのも楽しみの一つ。メフィスト出身らしさを感じさせる、妙にキャラの立った探偵と助手ポジションのキャラクターが出てくると、読むのが楽しくなる。この先の展開がどうなるか、やなぜ虫が荒ぶるのか、といった筋運びは想定内を大きく飛び出さないので、虫の描写。演奏の緊迫感。とぼけた助手とマクガフィン探偵のコミカルなやりとりを中心に読むのが吉。探偵と助手の手つき、それから終わりの一節で、百合みが滲み出すのは井上氏の趣味じゃない?
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