
たなぱんだ
@tanapanda
2025年2月2日

投票の倫理学 下
ジェイソン・ブレナン,
柴田龍人,
榊原清玄,
玉手慎太郎,
見崎史拓
読み終わった
感想
「バカは選挙で投票すべきではない」という挑発的な主張を展開する一冊。
賛否が分かれるであろう意見だけど、著者は決して感情的に議論を進めるわけではなく、論理構造を意識して冷静に議論を組み立てている。実際、本書の半分ほどは「想定される反論」とそれに対する「再反論」に費やされており、徹底的に理詰めで主張が展開されている。議論好きの人にはハマる文章構成だと思う。
ただ、個人的には、最後まで筆者の主張に納得できなかった。たとえば、彼の主張には「『バカ』でない人の一定数は選挙で投票する」ことが必要だが、「なぜ彼らは投票するのか/すべきなのか」という点がほとんど説明がなされていない。また、筆者は経済学の効用関数の考え方を援用しているが、特定の関数形でしか議論していない(多くの箇所で、金銭リターンのみを入力とする線型関数と仮定している)点も気になった。
とはいえ、民主主義を「神聖なもの」とせずに議論しようとする試みは評価されるべきだし、「民主主義は投票さえすれば機能するものではない」という視点にはもっともらしさがある。この本を叩き台にしつつ、誰かと「誰もが選挙で投票すべきなのか」や「僕たちはどう投票すべきなのか」を議論したい。そんな気持ちになった一冊。
奇抜な主張に興味がある人や、著者とロジカルなレスバをする気分を味わいたい人にはおすすめ。