
絵美子
@835emiko
2025年12月13日

図書準備室(新潮文庫)
田中慎弥
読み終わった
著者の話し方、その所作や様子が好きで動画やインタビューを何度も繰り返し見たり聞いたりする訳だけど、この図書準備室も主人公(もはや主人公なのかも不明に思えるがおそらく本人、または本人に近い設定の人物)が口語的に語る場面が続き、行きつ戻りつしながら世捨て人=中学校教師の吉岡の話をする。
そんなに細かいところまで語るから過去からわりと最近に近い方の過去、また戻って古い過去と行きつ戻りつするのでは、と思うような語り手が何か言う度に付随して思い出される記憶をいちいち掬いあげて言葉にしていく台詞が続くが、相手に伝えたいから話している訳ではない気配と、その色もなく語られる行きつ戻りつは全然こちらを離してくれず少しの嫌悪感がうまれ、ある状況を断面ごと記憶しているかのようにいつでも取り出せてしまう人間はこういうあちらこちらへ行く話し方をするし、同族嫌悪かなという気持ちをいちいち捨てながら読み進めた。この行きつ戻りつは自分の頭から放った言葉ではあるが、それを誠実さだとか丁寧さだとかきちんと伝えようとしているとか、受け取り方はあなたに任せると言うような、壁打ちでひとと話しているような長話だとおもった、落語の対極みたいな。
読書に快適さとか心地良さを求めていないけど最初から最後までうす気味の悪い吉岡をさらに上まわる主人公の吉岡への感想から、断面ををよく覚えているのは他者との関係のなさ(感情の取引のなさ)からかな、とふと思った。まあ論理的に話せていないだけかもしれないが主人公の台詞を借りれば、「この我慢出来なさそうで出来そうでっていう時は、けっこう気持いいんじゃないでしょうかね」ということだ。アー