
blue-red
@blue-red
2025年12月14日

土の中の子供
中村文則
読み終わった
単行本
芥川賞
主人公が物を落とし始めたときは「あーあヤバい小説に当たってしまった」と思ったが、なるほどそのような生まれと育ちの背景があるのか。
全体を通し、癖になる暗さに満ちている。暗い森を深く奥へ進んでいくような。ページをめくる動機は、単なる怖いもの見たさなのか、その奥で人の心の捉えきれない豊かさを見れる予感がするせいか。
むろん後者は幻想で、著者・中村文則の圧倒的な心理描写のせいで熱に当てられただけだ。あるのは、決してロマンチックなものではなく、単なる破滅願望と強迫観念と憤怒と生存本能の支離滅裂な混濁だ。突発的な感情のうねりだ。よくある話だ。心理カウンセリングにでも行ってスマートに解決しよう。たとえ主人公の身の上や出来事を遠い世界のように感じられたとしても、誰もこれとは無縁ではいられない。埋めたつもりでも土の中から何度も滲み出てくるのだから。

