
はる
@tsukiyo_0429
2025年12月9日

流刑地にて
フランツ・カフカ,
Franz Kafka,
池内紀
読み終わった
短編小説ととても短い小品が収録されている。
その中から、主に短編小説について感想を述べる。
『判決』
こんなに短い話でこんなにも心がぐちゃぐちゃになることがあるのか!?と、その読み心地に驚いた。
少しずつ雲行きが怪しくなっていく展開にハラハラさせられた。
恐らく認知症である父親とのやり取りは、今の年齢だからこそ響くものがあった。
『流刑地にて』
あとがき「『流刑地にて』の読者のために」によると、この作品はカフカが生涯に一度だけ行なった自作朗読会で読んだ小説とのこと。
よりにもよってこの作品を朗読したなんて……!!と思わずにはいられなかった。
実際、聴衆の三人が失神し、会場から運び出されたらしい。
この作品は、「拷問で可能な限り苦しませて処刑する機械」について、将校によって話が進められていく形で展開していく。
処刑の話をしているシリアスなシーンなのに、なぜか滑稽に思えてならなかった。
どんな展開になるかドキドキしながら読んだ。
将校は自らの信念のために死を選んだのに、彼の顔には約束されていたはずの「浄化の表情」など現れず、その虚しさに胸が苦しくなった。
喫茶店のテーブルの下に埋められた墓も、虚しくてたまらなかった。
この流刑地は近い将来滅びるんだろうな、という予感が渦巻いていた。
『火夫』
主人公のカールは、火夫である男を助けることで依存し、縋っているように思えた。
そしてこの作品を読んで一番に思ったことは、「火夫の男が愛おしすぎる」ということだった。
火夫はドイツ人で、身体も態度も大きいと冒頭で描かれる。
そんな彼は、自身の不遇を訴えるために、息巻いて事務室に向かう。
しかしそこから、
・調理場の女性を誘っても相手にされない
・出ていけと言われて「切々と苦しみを訴える恋人のような目つき」でカールを見つめる
・訴える機会を得たのに感情にのまれて全然うまく話せない
・カールに手を握られて、目をきらきらと光らせ、恍惚した顔つきになる
と愛おしさが溢れる描写が続き、この火夫の今後に思いを馳せてしまった。
しかし火夫など最初から存在しなかったように思えてしまうラストには、胸が苦しくなった。
数が多い者、口がうまい者、権力がある者に、こういう人たちは消されてしまう。
カールの伯父だと言う男については、全てが芝居がかって見えて、胡散臭く感じた。
伯父というのは本当なのだろうか、と疑いたくなる人物だった。
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カフカの作品を久しぶりに読んだが、とても興味深くおもしろかった。
今回は書店で購入した白水uブックスで読んだのだが、紙が柔らかい新書サイズで読みやすかった。

