
izy
@izy
2025年3月9日

ヒロインズ
ケイト・ザンブレノ
かつて読んだ
F・スコット・フィッツジェラルドやT・S・エリオット、ヘンリー・ミラーといった近代文学史に名を残す偉大な“男性”作家の陰で、彼らから抑圧され創造的搾取を受け続けた女性たち(主には妻や愛人)を追った伝記。
彼女たちは彼女たちでありたかった。しかし、つねに「○○夫人」や「○○のミューズ」としてしか扱われず、自ら書いた手紙や日記や口に出した言葉は夫たちの創作の素材として美味しい部分だけを吸い上げられていった。まるで現実での実態を少しずつ千切り取られ、虚構世界に閉じ込められてしまうかのように。
思考と連想の洪水のような文章で、現在と過去、フィクションと史実が縦横無尽に絡まりまくる。強い感性から生み出された言葉が、支離滅裂の一歩手前で強烈な魅力を放つ。周辺に追いやられた女性たちの声と、著者自身の「表現したい」という生の声が混じり合ううちに、本書はいつしか伝記的な枠組みから遠く逸脱し、ひとつの大きなタペストリーとなっていく。

