
たにこ
@chico75_11427
2025年12月17日
ひとまず上出来
ジェーン・スー
読み終わった
背中を押してくれるエッセイ集だった。一個人の中年女性として感じている物事をクスッと笑えるような文章も交えつつ、一つ一つの言葉に著者の個人としての強さ、あたたかさが含まれていて、読んでいて心地よかった。タイトルの「ひとまず上出来」も肩の力を抜いてごらん、と言ってくれているみたいで。中には女性ならではの不遇や、理不尽な場面に負けない力強い文章もあり。かっこいい。
『「怒ってる?」って聞かないで』では、失望や悲しみなどの感情を「怒り」として決めつけてかかることに対してのモヤモヤを書かれていた。私は自分のしたことに対して相手が不快になっていないか不安になって「怒ってる?」と聞いてしまうことがある。状況は違うけど、私が尋ねることで相手がどう思うか、考えてから発言すべきだなと内省。そして切り替えていこう。きっかけをくれてありがとうございますの気持ち。



たにこ
@chico75_11427
覚えておきたいなと思った言葉たち↓
膝の開いた女たちの出現は、女の自立が少しは進んだ証なのだと真顔で思います。とは言え、だ。膝を開いていようが閉じていようが、「女」という属性を背負っているだけで、舐めてかかってくる人はいます。威圧感のある強い女になりたいわけではないけれど、なんでも言うことを聞く都合の良い女とは、絶対に思われたくない。
ひるみそうになったら、ハートの「バラクーダ」を聴いて心を奮い立たせてみてはいかがでしょう。(中略)レーベルの狡猾な担当者たちを怪魚バラクーダにたとえ、力強く反旗を振りかざして歌っております。
電車の中でふんわり膝を開いている女性陣を見るたび、柔らかな空気とは裏腹に、私の頭の中にはこの曲が流れます。私たちは、日本の足の間に鋭い歯を持つ怪魚を飼っているんだぜ。(P18〜19)
過度な見栄がなくなるのは素晴らしいことだけど、この調子でいくと、好奇心旺盛だけが取り柄の幼児みたいな老人になる日もそう遠くはなさそうです。
それはそれで、本人は楽しいのだから良しとしよう。他人にひどく迷惑をかけないことだけ頑張ろう。(P23)
定番のあれこれに不具合を感じながら「こんなものだろう」と思っているならむしろ吉日、新しい定番を見つけるためのトライアル&エラーを始めるタイミングと言えます。自分の「ちょうど良い」を新たに見つけて認めるのは、自己受容の更新でもありますし。(中略)「私にはこの辺が妥当」と半ば思考停止でジャッジしていることを、めんどうくさがらず変えてみる。すると、八方塞がりなモヤモヤが晴れ、自己肯定感が高まることもあるやもしれず。
本当の居心地の良さを見栄や卑下で放棄するのは、もったいないことです。「違うな」と思ったら、元に戻せば良いだけの話ですし。(P34〜35)
不測の事態に慌てふためかず、世間では年甲斐もないとされることにも怯えず、自分が楽しいと思ったほうに引っ張られて、自分で自分を幸せにしなきゃ。
自分を不幸せなところに置いたままにしない。自分で選択したことの責任を取る。大人の責務って、この二つくらいだものね。(P71)

たにこ
@chico75_11427
肉体にしろ精神にしろ、変わるも変わらないも本人の自由。しかし、自分の身を粗末に扱う自暴自棄と不測があってもそれで良しと自己受容する朗らかな諦観はやっぱり別物で、その違いは「自分のことを好きか」ではなく、「自分に好きなところがあるか」なのかもしれません。(中略)いきなり自分を好きになるのは難しい。でも「自分のここが好き」が見つかると、放っておいてもなりたい自分にどんどん変わっていくんでしょうね。面白いな。(P119)
家庭、職場、恋愛で損な役回りばかりと感じるなら、押し付けられた役なのか、手放せない役なのか、一度じっくり考えてみる必要がありそうです。(中略)
かけがえのない存在は、意外なところにいるもんです。自分に低い価値をつける人に囲まれてると感じるなら、その場からいなくなるのもネガティブキャラを捨てる方法のひとつ。
すべてを笑い飛ばす必要はないけれど、すべてをトラウマにする必然もない。明日はあなたのために来るのだから。(P150〜151)
アンダードッグとは負け犬のこと。つまり、敗者。しかし「敗者は挑戦者でもある。好きなことをあきらめないで、いつか立ち上がれる」とアリシアは歌います。
きれいごとと笑うなかれ。私は彼女の姿勢に励まされます。自分の可能性の芽を自分で摘むのだけはやめておくれ。(P155)
頑張れないと思ったら「頑張らない」と言い直すのはどうでしょうか。可能/不可能の話ではなく、意思の問題にしてしまえば少しは気が楽になると思います。(P159)
社会的に期待される役割からはみ出すと、不遇という罰を受ける場面があるのは不条理だけれど、強制的に割り当てられた役割ではないのも忘れてはならないところ。沁みついた奴隷根性のシミ抜きは、自分でやらなきゃ誰がやる。
できるかどうかではなく、やりたいか、やりたくないか。
そこを曖昧にしておけば、周囲に好感は持たれるかもしれない。しかし、あなたに好感を持った人が、あなたを幸せにしてくれるわけではないのですよ。(P198)