
月明かり
@book_dragon
2023年2月26日

パチンコ 上
ミン・ジン・リー,
池田真紀子
かつて読んだ
人が何者であるかを決めるのは“血”ではなくその人自身のはずなのに、そうはさせてくれない社会の残酷さ。
中学時代、外国人の父と日本人の母の元で育った同級生が“私はどちらでもない”と言ってトイレで泣いていた遠い記憶。当時の私はその言葉を何も理解してなかったと今更気づいた。
作中憤りや悲しみに何度もぶち当たりながらも、それと同じくらい人の優しさや温かさを感じる場面があるのは筆者が30年もかけて執筆活動や取材を続けていくなかで、日本に対する気持ちが怒りや憎しみに限らずもっと複雑なものであることに気づいたから。その様子が物語の中に見事に反映されている。
彼らの人生を体験するような感覚で夢中になって読む自分がいた。特にソンジャとノアの場面は苦しくて何度も本を閉じた。2人を映像で見るのはなかなか勇気がいるけどこれほどの大作に出会えた事は読書の醍醐味。下巻ラスト数ページは体の水分全部出ちゃうくらい感情が溢れ出る。沢山の人に読んでほしい。