
みなさく
@minahiton
2025年12月19日
硝子の塔の殺人
知念実希人
読み終わった
audible
2025年
ミステリ
新本格ミステリで育ったファンにとって、幕の内弁当的作品。満腹、満足。
遅ればせながら、文庫化を機に拝読。(読んだのは単行本ですが)
話題になっていたので、面白いんだろなとは思っていましたが、あからさまな「こういうの好きなんでしょ?」って感じに二の足踏んでいたのです…w
本作はまさに、巻末の島田荘司先生の解説にもあるように、ミステリの手法を使いこなして作られた作品。
古今東西の名作を研究し、緻密な計算の上で、新本格の先達への敬意とジャンルへの愛をもって書いたのだろうなと感じられる。
だからこそ、読者への「こういうの好きなんでしょ?」が沢山詰まった作品とも言えるので、そこで好き嫌いが出るかもしれないけど、私は「はい、好きです」と答える。
本筋から度々外れる脱線話では、ミステリ初心者には薦め辛くなるほど、名作ミステリ蘊蓄と新本格ムーブメント論が熱く語られるので、物語のテンポは悪くなるけど、ミステリファンには嬉しい要素でもある。
探偵と犯人以外キャラが少し薄い(というか定型的過ぎた)気がするので、なんとなく色々察してしまうのだけど、そこを倒叙ミステリの構成を組み込む事で、ここからどうするんだろう?という引きを生み出していて、犯人やオチに察しがついてもちゃんと先が気になるように作られていて、読んでいて飽きない。
奇妙な構造の建物、二度の読者への挑戦状、暗号やどんでん返し要素も、とにかく読者を楽しませようというサービス精神のもと作られている作品だと思った。
↑前段では2時間サスペンスの犯人をキャストで当てるような事を言ってしまったが、それ以外にも、言い回しの中に犯人を推測できる違和感が解りやすく埋め込まれているので、このテのオチに慣れたミステリファンには、容易に真犯人に察しがつくように設定されており、解決編で伏線が明かされた際に「え?それってドコ?」とはならず、「あの時のね、やっぱりね」と納得できるように印象深く提示あるのが、ミステリのレベル設定が上手い作家さんだなぁと。
こういう伏線は、驚かせようとして伏せ過ぎると、「はあ、そうですか…」となってしまうし、解りやす過ぎるとつまらない…読者の興味とストレスのバランスを上手く操作している感じがして心地よかったです。
ただ、最後のエピローグあたりは爽やかな雰囲気出しているけど、それはどうなのよ…でした。
第三の殺人で大切な人を常人には理解しがたい理由で殺された人物の事を思うと、その爽やかムードに、いや、待て待て、とツッコミをいれてしまう。自分も大切な人がいるんだから、そこは「いつか必ず谷底へ連れてってやるよ」くらいの感じでいてくれよ…と。そこだけ残念だったかな。
いや、でも、そもそもこの人も倫理観ズレてんだっけ…大事な人のためなら殺人も厭わないんだもんな…なら、そういうラストもアリなのか、な…?
ともあれ、探偵と犯人の関係性自体は好きなので続きがあったら読みたい……けど、このまま続編無い方が綺麗な気もする……でも、続きあったら絶対読みます、という複雑な読後感ですw
あの厚みが嘘のような、あっという間の楽しい読書体験をありがとうございました。
追記
Audibleでも聴きました!
男性ナレーターさんが一人で朗読されているんですが、めちゃくちゃ上手いです。地の文も聴きやすく、男性キャラの演じ分けも声や話し方のバリエーションが幅広くて素晴らしいし、女性キャラも男性の声なのに違和感ないのが凄い。
このナレーターさん、麻耶雄嵩作品も担当されているので、再読も兼ねて是非聞こうと思います!!

