

みなさく
@minahiton
ミステリ生まれ、少年漫画育ち、近代文学沼在住。超遅読。
- 2025年12月22日
私はチクワに殺されます五条紀夫ミステリ2025年audible読み終わった穴を覗くと人が死ぬ。 チクワの穴を塞げ。世界を救うために。 まず、タイトルがどういう事だってばよってなるけど、その通りだから仕方ない。 チクワの穴を覗くと人が死ぬという事に気づき、悪用されないように奔走するうちに、その力に取り憑かれ、その身を滅ぼす……。 まるで、チクワ版『デスノート』のような話が書かれた手記からはじまり、手記に書かれた事を別視点から探るインタビューと、インタビュアーの書いた断片で、二転三転と物語の真相がひっくり返る構造はまさにどんでん返し。 ラストはちょっと『ひぐらしの鳴く頃に』的な匂いも感じて、懐かしくもあった。 カテゴライズするならミステリなのだが、色んな意味で確実に面白いけれど、ジャンル不明の不思議な小説。 視点の歪みが上手く利用された見事な叙述ミステリである。 しかし、途中は真面目にチクワの神とかチクワチクワ何言ってんだwって笑ってしまう部分もあって、バカミス味もある。 チクワによる(?)殺害描写は凄惨でグロくもあり、読後の薄気味悪さはホラーでもある。 なんなんだこの小説はw 『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』に続いて、この作者さんの文章、クセになるw しばらく作家さんの作品を追いかけようと決めました。 追記 Audibleも聴きました!凄く良かったです! 淡々と語る手記のパート、インタビューを受ける女性パート、断片パートの男性と女性の掛け合い、全部聴きやすく、使い分けもお見事でした。 淡々と「チクワの神」とか語られるからこそ、何言ってんだwって笑ってしまうw 一部に仕込まれるホラーぽい演出も、音声だと本以上に「ビクッ」ってなると思うので、Audibleオススメです! - 2025年12月20日
ミステリ2025年audible読み終わった初っ端からもうオモロイw ノンストップ・エンタメ・ミステリ! まずは原典の『走れメロス』を読んでからのほうが万倍楽しめる。 太宰治の史実をある程度知っていたらなお面白く読める(熱海事件あたり) 私は両方踏まえて読んでいるので、めちゃくちゃ面白かった。 最初の導入からもう笑わせにきている。 人名、適当過ぎてw(そしてそれを語り手によってセルフツッコミw) つかみからチョイチョイ笑わせてくれるので、ずっと退屈しない。 何より、フィジカルは全てを解決すると信じて行動する主人公メロスのキャラがずっとオモロイw 真面目な文体に様子がオカシイ事が書かれていて不意打ちを喰らうので、周囲に人がいない所で読むの推奨。 しかし、ただのバカミスっていう訳でもなく、ひとつひとつの事件はちゃんとしていて、推理にも納得がいく。 イマジナリーセリヌンティウスの存在に対する謎という引きも上手いし、推理パートの掛け合いもテンポよく読ませてくれて、笑いを誘いながらもしっかり論理的推理…でもやっぱフィジカルw そして、各話に挟まれた大謎への伏線も見事でした。明かされた時、なるほどな、となる。 西洋の歴史や人物の史実もよく調べられていて、語り手によってメタツッコミされたりプチ情報として挟み込まれる雑学も面白い。 とにかくずっとオモロイから、読んでみて!と言って気軽に薦められる良い本。 他の作品も気になるから、読んでみようと思います。 追記 Audibleもメッチャ良かったです! 男性ナレーターさんのキャラの演じ分けも多彩で、多種多様な男キャラのわんさか出てくる作品なのに、誰のセリフか混乱しない上に、キャラ作りが秀逸過ぎて、読んだ際は特に意識していなかったモブキャラにもちゃんとイメージが湧きました。子分かわいいなw あと、間の取り方や声のトーンでも沢山笑わせてもらいましたw なので、一度読んだ方もAudibleオススメです! この方のナレーターされている他の作品も読みたいです。 - 2025年12月19日
硝子の塔の殺人知念実希人ミステリ2025年audible読み終わった新本格ミステリで育ったファンにとって、幕の内弁当的作品。満腹、満足。 遅ればせながら、文庫化を機に拝読。(読んだのは単行本ですが) 話題になっていたので、面白いんだろなとは思っていましたが、あからさまな「こういうの好きなんでしょ?」って感じに二の足踏んでいたのです…w 本作はまさに、巻末の島田荘司先生の解説にもあるように、ミステリの手法を使いこなして作られた作品。 古今東西の名作を研究し、緻密な計算の上で、新本格の先達への敬意とジャンルへの愛をもって書いたのだろうなと感じられる。 だからこそ、読者への「こういうの好きなんでしょ?」が沢山詰まった作品とも言えるので、そこで好き嫌いが出るかもしれないけど、私は「はい、好きです」と答える。 本筋から度々外れる脱線話では、ミステリ初心者には薦め辛くなるほど、名作ミステリ蘊蓄と新本格ムーブメント論が熱く語られるので、物語のテンポは悪くなるけど、ミステリファンには嬉しい要素でもある。 探偵と犯人以外キャラが少し薄い(というか定型的過ぎた)気がするので、なんとなく色々察してしまうのだけど、そこを倒叙ミステリの構成を組み込む事で、ここからどうするんだろう?という引きを生み出していて、犯人やオチに察しがついてもちゃんと先が気になるように作られていて、読んでいて飽きない。 奇妙な構造の建物、二度の読者への挑戦状、暗号やどんでん返し要素も、とにかく読者を楽しませようというサービス精神のもと作られている作品だと思った。 ↑前段では2時間サスペンスの犯人をキャストで当てるような事を言ってしまったが、それ以外にも、言い回しの中に犯人を推測できる違和感が解りやすく埋め込まれているので、このテのオチに慣れたミステリファンには、容易に真犯人に察しがつくように設定されており、解決編で伏線が明かされた際に「え?それってドコ?」とはならず、「あの時のね、やっぱりね」と納得できるように印象深く提示あるのが、ミステリのレベル設定が上手い作家さんだなぁと。 こういう伏線は、驚かせようとして伏せ過ぎると、「はあ、そうですか…」となってしまうし、解りやす過ぎるとつまらない…読者の興味とストレスのバランスを上手く操作している感じがして心地よかったです。 ただ、最後のエピローグあたりは爽やかな雰囲気出しているけど、それはどうなのよ…でした。 第三の殺人で大切な人を常人には理解しがたい理由で殺された人物の事を思うと、その爽やかムードに、いや、待て待て、とツッコミをいれてしまう。自分も大切な人がいるんだから、そこは「いつか必ず谷底へ連れてってやるよ」くらいの感じでいてくれよ…と。そこだけ残念だったかな。 いや、でも、そもそもこの人も倫理観ズレてんだっけ…大事な人のためなら殺人も厭わないんだもんな…なら、そういうラストもアリなのか、な…? ともあれ、探偵と犯人の関係性自体は好きなので続きがあったら読みたい……けど、このまま続編無い方が綺麗な気もする……でも、続きあったら絶対読みます、という複雑な読後感ですw あの厚みが嘘のような、あっという間の楽しい読書体験をありがとうございました。 追記 Audibleでも聴きました! 男性ナレーターさんが一人で朗読されているんですが、めちゃくちゃ上手いです。地の文も聴きやすく、男性キャラの演じ分けも声や話し方のバリエーションが幅広くて素晴らしいし、女性キャラも男性の声なのに違和感ないのが凄い。 このナレーターさん、麻耶雄嵩作品も担当されているので、再読も兼ねて是非聞こうと思います!! - 2025年12月11日
ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。ダンシングスネイル,生田美保2025年読み終わった気になるタイトルだったから読んでみた。 イラストが多く、ちょっとした合間に読める。 人間関係を整理する前に考えたいこと色々。 適切な距離が人によって違うから、自分の快適な距離を把握しておきたい。 - 2025年11月21日
爆弾呉勝浩ミステリ2025年audible読み終わったタゴサクの不思議な話術に一気読み。 映画版や漫画版もいいけどAudibleもオススメ。 映画化するとなって、不意打ちのネタバレ食らいたくなくて急いで原作読みました。 いやぁ、一気読みでした!! ※今は映画、漫画、Aaudible、続編を履修済み トリックとか探偵行為や推理、そういうのは無いのでミステリか?って言われたら広義のミステリ……というよりどちらかといえばサスペンスだけど、そういうジャンル云々を超えて物語として面白かったです! 分厚い本ですが、展開がずっとスリリングでスピーディーなので、ページを捲る手が止まらん…! 群像劇でもあり、視点人物が場面場面で変わるので、色んな考え方や行動理由が入り混じるのが小説の構造として面白い。 それぞれのキャラクターも魅力的で、タゴサクの不気味な感じ、等々力さんの飄々としながらも影ある感じ、伊勢くんや矢吹くん&倖田さんの人間臭さ、なによりタゴサクに翻弄される清宮さんの後ろで控えてる類家くんの頼もしさよ。 類家くん、犯罪者側に近いのでは?というような危うい思考回路を持ちながらも刑事としてタゴサクを追い詰めるのがとても良い。 向こう側へ行かないための手綱を清宮さん達仲間が握っている感じもよき。 映画のキャスティングは本当にどのキャラもピッタリで実力派の俳優さん達が演じられていたし、特に細かい視線のお芝居が、キャラ同士の関係性や語られない心情を観客に伝えていてとても良かった。 あと、映画ならではの細やかな演出(雪の中の遺体のアレもドキッとした)も最高でした!! 映画めちゃくちゃ良かった上で言うのですが、ぜひAudibleも聴いてみてほしい。 男性と女性のナレーター二人で朗読されているのですが、男性キャラは男性というような分方ではなく、視点人物(地の文の性別)で分られており、同じキャラを男性ナレーターと女性ナレーターの聴き比べもできて二度美味しい。 特に男性ナレーターさんの演じる類家とタゴサクは必聴。演じ分けが凄い。 そして、このタゴサクめちゃくちゃクセになるwというか喪黒福造が頭の中チラついたのは私だけではないはずw 続編は女性ナレーターさんがタゴサク役になることが多く、ちょっと物足りなく感じるくらいw ぜひ聴いてみてください! - 2025年11月18日
謎の香りはパン屋から土屋うさぎミステリ2025年audible読み終わったほんわかした表紙のとおり、人の死なない日常の謎ミステリ。 ロジックやサスペンス要素の濃いゴリゴリのミステリが苦手な方にはオススメ。 パン屋を舞台にしたヒューマンドラマにミステリ的エッセンスを加えた短編5編。 YAレーベルとか中高生をターゲットにした感じの印象。 なので、逆に、 こっからどんな事をやってくれるんだろ? さあ、来い!騙されてやるぞ! みたいな期待をして読む作品ではないので、このミス大賞受賞作として読むと物足りない。 が、別に作品自体が悪い訳ではなく、こちらのフィルターのせい。 作品自体は、日常の謎として読みやすいし、世界観も舞台も馴染みやすくて、万人受けする作品だと思う。文体も柔らかくサクサク読めた。 主人公の年齢設定から、2.5舞台やV配信者など、今どきの話題が織り込まれているので、そういう意味でも若い読者向けな印象。 個人的には、1話と2話は、各話の中心人物の考え方が理解し辛かったので苦戦したが、全体的には苦手な人はあまりいないだろう作品で、欠点は無いという選評も納得。 このミス大賞グランプリという冠無しで出会いたかった作品。 追記 audibleでも聴いてみた。 難解トリックや精緻なロジックが出てくる作品ではないので、ウォーキングとかしながら耳で聴くのにちょうどいい作品。 それこそ近所のパン屋まで歩いて行く時とかに。 - 2025年11月15日
どうせそろそろ死ぬんだし香坂鮪ミステリ2025年audible読み終わった舞台設定が魅力的で、このミス大賞ぽくてよい。 タイトルも惹かれるものがあったし、タイトル回収的なオチも綺麗。 文章はライトで読みやすいのでサクサク読める。 展開が二転三転する、見え方がひっくり返る仕掛けは好みだったが、ある程度どんでん返し系を読み慣れてしまっていると、「わー!そうだったのか!」とまではならず、「まぁ、違和感あったしなぁ」と、何か仕掛けられているのが何となく分かってしまうのが残念でしたが、そこは読み手の読書歴に左右される部分が大きいので仕方ないかも。 脇役と思われた人物が代理探偵役をする後半パートはテンポよく煽り散らかしてて快活。犯人とのこういうやり取り好きです。 追記 audibleにも入っていたので聴いてみた。 後半の推理パートのテンポの良さが、耳で聴くと良く分かる。 ただ、医療用語が頻発するので、本と併用がベストかなぁ。 - 2025年10月30日
謎屋珈琲店 21番目の挑戦峰月響介ミステリ2025年読み終わった買った実在するリアル店舗を舞台にした、ヒューマンミステリ。 行ったことある人もない人も、金沢本店に聖地巡礼したくなる作品。 元々、謎屋珈琲店さんが金沢本店しか無かった頃から謎屋さんの大ファンです。 今は東京と金沢に2店舗あり、3店舗とも何度も通っています。 毎月配信される謎解きも、お店で解くリドルも、脱出ゲームも、全部素晴らしい謎ばかり! そんな大好きなお店が舞台になった小説が出る!! しかも、作者はオーナー!!買うしかない!! と、元々「謎」への信頼が高い状態で読んだのですが、それ以外の部分も凄く良かった。 実店舗モデルなので、行ったことある身としては、ああ、それ〜っ!って嬉しくなる描写が沢山。 自分も体験した事があるやり取りや見たものが書かれていて楽しい。 さらに、そんな所まで書き込んで大丈夫なのか…?と心配になるくらいお店の舞台裏が描かれていて、これ、どこまでリアルなんだろ…ってなるくらい舞台設定の描写が細やか。 でも舞台設定の羅列にならず、ビジネス蘊蓄を織り交ぜながら、読んでて為になる話の中で舞台の裏事情が明かされるので退屈しない。 何より人間描写が濃密で解像度が高い。 だからこそ、読者もモヤモヤしてしまうのがリアル。 世の中には、自分と倫理観が違う人物も当然いる訳で、いろんな考え方や正義があるし、その物差しを作ってきたその人なりの背景がそれぞれにある。 だから、作中人物が許しても、私はまだモヤるなぁ…も起こりえるし、作中でも全てが丸く収まり大団円みたいなシンプルに気持ちの良い人間関係は描かれない。 人間の悪い面と良い面、それを見る人の視点による歪み、環境やタイミングのままならなさ、そういうものが生々しく、登場人物がキャラクターではなく、個々の人生を生きる人間だなと感じる。 ラストも、事件は一件落着しても、傷痕の残るもので、本を閉じた時に帯を見て、「ああ…」となる。 日常の謎のちょっといい話系ヒューマンミステリを予想させる、シックで美しい表紙に付けられた黒い帯に書かれた毒のある一文が、そういうことか…と納得。 それと、人間描写の解像度として、困ったお客様やアルバイトさんの描写もリアル。 私も接客業長いので、めちゃくちゃわかりみあると思いながら読んだ。いるいる。あるある。 全体の感想としては、一話目、二話目に張られた伏線や築かれた人間関係が三話目に生きてくるという王道展開も好み。 主人公・響介と探偵役の友人・樫原の関係性も良く、互いに必要なものを与えあっているのが尊い。 続編があるなら、彼らの過去やこれからの成長や変化を見てみたいと思う。 というか、東京文京店編、杜の里店編ありますよね? あと個人的には、実は本店には6回しか行った事がないので、次行った時はオーナー自ら淹れた珈琲をぜひ味わってみたいと思いました!だって、あんな風に書いてあると、ね? 今度、本店に聖地巡礼した時、樫原さんのソファ席、空いてるといいなぁ。 - 2025年10月23日
一次元の挿し木松下龍之介ミステリ2025年読み終わったなぜ、本作が「このミス大賞」グランプリじゃなかったんだ……?という事が一番のミステリ。 ーヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。ー なんやこの謎、大好物!はい、優勝! とあらすじだけで思ったくらい、魅力的なフック。 さすがこのミス……だけど、大賞ではなく文庫グランプリらしい。 あらすじに惹かれながらも、これだけ強い武器がありながら、大賞逃すような致命的な欠点でもあったのだろうか?と思って読んでみる。 いや?なぜ?ホント、私がこの賞に期待している要素が全部備わっているんだが……? 魅力的な謎、ページを捲らせるドキドキの展開、大風呂敷の畳み方、え、これ一位じゃないんだ……? この回の最終候補作、出版されたものは全て読んだし、最終候補作品の選評や各作品の解説も読んだけど、このミスに期待される作品てこういうのじゃないの?少なくとも私はそう。 面白いで言えば、他の候補にも面白いのはあるし、私の好みもあるんだけど、「このミス」らしさとか「このミス大賞」の納得感を備えているのは、この作品だと思うんだけどなぁ〜。 確かに、真相のヒントが具体的な数字や思い出話や表紙やら至る所で大盤振る舞いなので、「たぶんこうなんだろうなぁ」と誰でも思うし、実際そうなんだけど、単なる答え合わせの為にページを捲らされている感覚にならない展開の上手さに、「話の転がし方がうめぇなぁ!読ませるねぇ!」となりながら終始読み進められた。 前半、初っ端から投げられる魅力的な謎にグイグイ引きこまれ、中盤は登場人物たちの思惑と駆け引き、背後に迫ってくる不穏な空気、どんどん不安が広がって、謎の真相に見当がついたとしても、次の展開や話の結末はどうなるんだろ…という興味が失われず、読む手が失速しない。 後半はバイオハザード3でネメシスに追われている時を思い出すようなドキドキの連続でした。(殺人犯の登場を表す効果音の使い方も上手い) 話の畳み方も好き。こういう結末もすき。私はね。(ワンチャン続編も望める結末だし。) 映像化しても絶対面白いヤツやん。しないかなぁ。できれば映画化。 一つだけ残念だったのが、私の推しが序盤に少し出てきただけで出番終了だったことwエピローグに出てこないか期待したのに…残念無念w そういう意味でも続編希望。 - 2025年10月20日
我孫子武丸犯人当て全集我孫子武丸ミステリ2025年読み終わった再録集だからいいか……とか思っていたが、やっぱり買って良かった‼︎ 昔PSPで出たゲームのシナリオ(名前は変えてある)から、近年出た『推理の時間です』に収録されていた短編など、5編を集めた短編集。 読んだ事あるから買うか迷っていたが、作家のファンなので結局買った。 出題編→挑戦状→解答編、という構成に加え、各作品の末にその作品の著者解説が付いている。 著者がどういう所に気を配って作っているのかとか、著者の考える犯人当てとは…とか、作る側の視点の解説で、これから犯人当てを書こうとする人への参考書にもなる。 制作の舞台裏が知れて楽しかったです。 この中では、「記憶のアリバイ」だけ未読だったのだけど、一番好みの謎でした。 - 2025年10月6日
白魔の檻山口未桜ミステリ2025年読み終わった『禁忌の子』に続く<城崎シリーズ>二作目は、霧と毒ガスに覆われた病院×不可能殺人のクローズドサークルミステリ。 前作が、私好みの魅力的な謎とヘビーなテーマでもエンタメとしてラストまで面白く読めたので、今作も発売前から期待していた。 ー霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──。 現代ミステリでは、まずクローズドにするのが大変で、現実味を残しつつ、でも魅力的に、閉鎖され外部と音信不通の状況を作らないといけない訳ですが、「なるほど、こいつは美味しそうな舞台だ」ってあらすじ見てなった。 例えば登山中に濃霧に覆われて山荘から出られないとかと違って、舞台となる病院には患者がいて、当然、閉鎖された状況になっても医師たちによる医療行為が行われている現場でもあるわけで……。 彼らは容疑者でありながら、主人公たちにとって、全員守らなければいけない命でもあり、その為に絶対協力しなければならない人たちでもある、というのが面白い。 事件が解決されないまま第二の事件も発生し、霧も晴れず、ガスも溜まっていき……どんどん物理的にも精神的にも追い詰められていく中で、疑心暗鬼になっていく医療スタッフたち、不安を爆発させる患者たち、ガスのタイムリミットと医療の停止による命のタイムリミット……前作とは違う角度からヘビーでした。 著者の現役医師というスペックを活かしたお仕事モノ小説としても興味深く、災害医療や僻地医療を考えさせられる。 コロナ禍や震災で浮き彫りになった問題点や、医療を受ける側の認識、色々と斬り込んで描かれているが、そこは流石の説得力ですよ。こういうのは医療従事者でないと書けない。(素人が調べて書いてもきっとペラペラになる) そのリアルさが小説としての厚みを持たせていると思う。 医療用語解説のおかげもあり、専門用語のオンパレードから始まった前作より丁寧に説明がされていて、今作は医療シーンも置いてけぼりにならずに読めるので安心。 今作の語り手兼城崎先生のワトソン役は、前回ちょい役だった研修医の春田さん。 そのせいか、城崎先生の顔面偏差値の高さを伝える描写が増した気がするw(前作は友人関係だから表現が直接的じゃなかったから?) 前作の語り手であった武田先生は、続編難しいかな?と思っていたけど、少しだけ出ていて嬉しかった。 ここから少しネタバレ。 犯人の絞り方とかは犯人当てモノっぽい作りになっていて、挑戦状こそ挟まれないけど、会話中で前提条件などを整理して、推理する箇所を提示してあるので、謎解きチャレンジは可能。王道ストレートな犯人当てでした。 ただ、犯人さん証拠の隠滅は他に方法あったやろ……とも思ったので、真相の全てに納得するかは読み手次第ではないかと。 単に私は作品に書かれている以上、その世界ではそうなんだと思って納得するタイプなので、気になっても、その作品に対する評価は下がらないですけど。 犯人については、状況的にどんどんクロになっていく中頼むからこの人どうか犯人でありませんように……と願いながら読んだ。 まあ、そういう人が犯人な方が物語として面白くなってしまうからしゃーない。 ともあれ、今作も面白かった! 謎は前作のほうが魅力的だったけど、それでも小説としては今作の方が好きでした! 次回作も楽しみにしております! - 2025年10月3日
逆ソクラテス伊坂幸太郎2025年audible読み終わった再読読後感が爽やかで文章も読みやすく、読む人を選ばない短編集。 Audibleにて再読。 伊坂幸太郎は何作か読んできたけど、有名なシリーズやメディア化された作品より『終末のフール』が一番好きだ。 そんな私の2番目に好きな伊坂作品が、この『逆ソクラテス』。 小中学生から読める作品なので、ミステリ的な要素や伏線回収などの印象が強い普段の伊坂作品が好きなファンには物足りないかもしれないが、私にはそこが刺さった。分かりやすく、読みやすい、人を選ばない作品。 各話、独立して楽しめる短編だか、共通したテーマのようなものもあり、子どもから見た大人、子どもの視点を通して見える世界や、彼らの世界のルールが瑞々しく描かれていて、こんな友人や先生と子ども時代を過ごせていたらなと思ってしまう。(現実的にはこんな上手くはいかないんだけど、フィクションの中くらいは、ね) 全体の構成としては、登場人物の子どもの頃を回想して語られる短編連作で、それぞれの物語が緩く繋がりあっていて、登場人物のその後が分かったりするのもいい。 表紙に惹かれて読んでよかった。 覚えておかなければいけない伏線や証拠とかがあるわけではないので、日をおいて聴いてもいい短編連作という点でも、Audible向きの作品だと思う。 - 2025年9月30日
8番出口川村元気ミステリ2025年audible読み終わった映画未視聴なら引き返すこと。 徐々に真相を知る楽しさをフルに味わうなら、ゲーム→映画→小説(又はAudible)の順番で。 以前からSwitchのセルランで気になっていたゲームが映画化するという事で、どんなもんじゃろとプレイ。 え、コレをどう映画に? となりつつも、劇場へ。 原作のシンプルな間違い探しゲームに、ちゃんとストーリーがついていて、ホラー映画要素もあり、役者も安定の二宮和也さんで、映画として楽しめた。 映画の元となった小説版、映画見てしまったからストーリー知ってるしな…と思いつつもAudibleあるし、ナレーターが梶裕貴さんだったので、いっちょ聴いてみるか!と、視聴。 あ、これ、映画見る前に聞かない(読まない)方がいいですね。 冒頭でアナウンスされているように、映画未視聴なら引き返すこと。 以下、ネタバレ。 ストーリーとしては、映画とほぼ全く同じ。 主人公の行動や過去、おじさんの正体も同じ 。 なのですが、役者の演技で表現されていた部分や、映像の中に映っていても解釈が別れるような部分が、地の文による詳細な説明で明らかにされているので、ああ、アレはそういう事だったのか、とか、あの時の表情の裏でこんな事を考えていたのか、とかが解る。 特に、映画の中で少年はほぼセリフが無いので、小説版の少年視点の心情描写で明らかになる事も多く、彼が何者なのかは映画だけでは分かりにくいので、そこをハッキさせたい人には小説版の補足が必要かも。 それらを知った上で、もう一度映画見たら、役者さんの演技や演出の理解度が上がりそう。 エンディングでの主人公の行動も、小説版のほうが明確になっていて、スッキリ終わる感じ。 Audibleとしての感想は、流石の梶裕貴さんで、聴きやすいし、キャラクターのセリフの演じ分けはもちろんの事、この作品の魅力のひとつであるホラー要素、怪異の表現も凄い。 ぜひ聴いてもらいたいですが、やはり映画を観てからが、オススメです。 - 2025年9月29日
乱歩と千畝青柳碧人2025年読み終わった細部まで丹念に織り込まれた史実が、フィクションに真実味を与える。大河ドラマのような傑作。 以下、ネタバレあり。 江戸川乱歩ファンなので手に取った。 故に、乱歩の年譜は頭に入っているので、最後どうなるかまで、乱歩側の〈あらすじ〉を知っている状態で本作を読む事になる。 が、だからといって面白くなくなるかと言えばそんな事は全くなく、むしろ知っているからこそ、「あ、来るぞ、あの人だな…!」とニヤニヤしながら楽しめる。 三国志や新選組モノも、結末がわかっていてもみんな大好きなように、作家がどこをどう描くかで、筋を知っていても充分面白い。 杉原千畝は、命のビザを発行し続けた偉人として、ドキュメンタリーをテレビ番組で観た事があり覚えていたが、周辺人物など詳しい情報までは記憶していなかったので、こちらは純粋に時代小説として楽しんだ。 元々史実がすでに面白い乱歩の人生ですが、特に面白いのは、やはり横溝正史との関係で、笑いあり、涙あり、二人の熱い友情に感動した。 作中、千畝のサインと違い、自分のサインでは命を救う事はできないと言った乱歩だけど、戦後、乱歩の作品に救われた子どもたちは沢山いたはずで、その子どもたちの中から、有望なミステリ作家が沢山生まれたことが描かれていたのもファンとして嬉しい。 乱歩が種を蒔いて耕した土壌から育った作家達が繋いでいくミステリ界の未来も明るく、読後感が良かった。 千畝を支えた二人の妻の存在も素敵だった。 先妻のクラウディアが言った、「優しいほうを選びなさい」が、あのビザを発行させたのだし、冷静かつ、時に非情な反対を強いられる仕事に着きながらも、自分を見失わずに済んだという事が胸をうった。 もちろん、乱歩の妻隆さんも史実をベースに、主役を支えるヒロインてして魅力的に描かれており、色んな意味でイイ奥さんだった。強い。 後半は、アベンジャーズか!とツッコミを入れたくなるくらいに、バンバンあの頃のヒーロー&ヒロイン(著名人)が出てくるので、感動より笑いが来てしまった。 そんな中、あの昭和の歌姫だけ本名が書かれなかったのは、権利関係的なNGでもあったのだろうか? と思うくらい、他は実名でめっちゃ出てくる。 次は誰だ?と、楽しかった。 そして、とうとう、乱歩の年譜に終わりが来る。 知っていても、胸を抉られた。これは泣く。 千畝と乱歩が最期に見た夢、そしてエピローグで二人を繋いだ本と、そこに並んで書かれた文字、二人のもしもを描いたフィクションが終幕し、読者が本を閉じると、仲良く並んで歩く二人の背中がある。 そんな演出が仕掛けられた素敵な装丁まで心にくい。 フィクションが多分に盛り込まれているとはいえ、歴史上実在した人物なので、朝ドラ「ばけばけ」が終わったら、「乱歩と千畝」やってくれないかなぁ。 - 2025年9月29日
殉教カテリナ車輪飛鳥部勝則ミステリ2025年読み終わった図像学×本格という稀有なジャンルの謎の中に織り込まれた超絶技巧の仕掛けたっぷり!満足度の高いミステリ。 春頃に読んだのが、大作過ぎて感想が遅くなってしまいました。 これがデビュー作というのだから凄すぎて語彙が吹っ飛ぶ。 この回の鮎川賞選考委員である、島田荘司先生、有栖川有栖先生、綾辻行人先生という、当時でも既に充分レジェンド級作家が、満場一致で選んだのにも頷ける。 ミステリとしての内容だけでも、凄い作品なのに、作中に出てくる絵画も本人によるものなのだから、あらゆる意味で反則レベルの作品。 私はまだ不勉強な身という自覚はあるが、幼少期から国内ミステリを少なからず読んできて、なぜ今まで読む機会がなかったのか、本当に謎。誰かに薦められたり、名作ランキングで見たりする機会が今まで無かったのが、逆に奇跡。 いやぁ、この本に出会えて良かった。 以下、ネタバレあり。(トリックや犯人については触れていないが、先に本を読んでから以外を読んで欲しい) 本作は、作中作の中に出てくる手記に真相が隠されている、という三重構造になっている。 まずは、現在の時間軸から始まり、美術館の事務員・井村の視点で物語は語られる。事務員が偶然見ていた図版を同館に勤める老学芸員・矢部が見たのをきっかけに、学芸員は「謎が、解けた」という不思議な言葉を漏らす。 それを機に、事務員と学芸員がミステリ談義に花を咲かせつつ、本作の魅力である図像学についても彼らの会話の中でわかりやすく解説される。 謎は解けた、というミステリ的な引きもありながら、図像学に関する講釈の内容自体も実に興味深く楽しいので、グイグイと話に引き込まれた。 謎めいた絵画、その作者である画家・東条寺桂の自殺、残された画家の手記……それらを追う学芸員の話。もうワクワクが止まらない。 そして、良質なミステリは、こういう序盤の会話シーンにも、重要な伏線を張り、結末に活かしてくれるものなのですよね。 次の階層は、学芸員・矢部視点。昔、絵のモデルが妻の若い頃に似ている事をきっかけに、東条寺桂の謎めいた絵に隠された意図を追った際の記録。 その画家とその絵を買い取った周辺人物たちの関係や、過去に起こった密室変死事件について探るうちに、東条寺桂の手記を手に入れて……という、ミステリ色がグッと強まる探偵パート。 自殺した画家の故郷を訪ねて、関係者にインタビューする様子が、ドキュメンタリー番組のようで、作中作という事を忘れて、東条寺桂が実在の作家のように思えてくる。作者本人が描いた絵画が、そのリアルさを強める効果があるように思う。 中核である階層は、自殺した画家・東条寺の手記……を、学芸員の矢部が活字化したもの。 手記には、東条寺が絵を描き始めた理由、東条寺に絵を教えたミステリアスな少女・佐野美香との出会いなどが記され、関係者から聞いていた話が次第に繋がっていく。 東条寺と美香の、プラトニックながらも絵の師弟や趣味の友人を超えた関係性も赤裸々に語られ、東条寺が美香に絵のモデルを頼んでいたことが明らかにされる。 そして手記の中盤、佐野美香が絵を出展した美術展の関係者が、ほぼ同時刻、別々の密室で変死するという事件が記される。被害者二人のうち一人は展覧会の審査員で、東条寺の義父である豪徳二。二人目の被害者は、美術展の受賞者・佐野美香。 二人は自殺となっているが、実はあの場にいた関係者の犯行で、同じ犯人、同じ凶器によって殺されたのではないかという推理がなされていく過程は、王道の本格ミステリで、嫌いな人はいないだろう。 そして、さまざまな憶測を整理し、作中推理を否定して、真相が語られ……ない。まま手記(この階層)は終わる。 しかし、それもそのはず。犯人もトリックも既に提示済みだから、ここで終わっているんですね。 その解説が以降に書かれるのですが、序盤でこの手記を事務員・井村に読ませるにあたって、手記は手書きで癖があり読みにくいからワープロで打ち出しておいたと説明されていたが、それを素直に信じて読むミステリファンは少ないでしょう。問題はこの件が、どう活かされてくるのか、であり、その引きも上手い。 手記に何らかの仕掛けを警戒しながら読み進めると、所々違和感を感じたり、辻褄が合わないように感じる部分に引っかかるのだけど、その違和感が最後に判明した時の爽快感は、読んだ者同士で握手したくなる。こういうの大好物。未読の方はぜひ体験してもらいたい。 そして、その手記の仕掛けの部分、井村君には伏せられていたけれど、読者には隠されていたどころか、めちゃくちゃバーンてわかりやすく目につくところにあるのが最高です。 この文章どっかで……ここじゃん!てなるし、その文章で犯人も自動的に1人に絞れる。 本当、最高ですね。 エピローグの切ない感じとか、色々なやるせなさとか、読後感が尾を引く印象的な人物描写も作品の魅力だと思いますし、選評では矢部さんが好評だったようですが、私のお気に入りは井村君です。 矢部さんとの関係性も、お互いのミステリ好きでその知識を信頼しあう歳の離れた友人のようでありながら、犯人と探偵ようでもあり、ただの職場の同僚という微妙な距離感がいいです。 なんというか井村君は、この濃厚な作品の中で、それを暴く立場の彼があっさりとしたキャラなのが好きで、「僕は普通の事務員です」のセリフ、解決編の推理パートだけでなく、冒頭でもちゃんと言わせてあるのがいい。 オリジナリティ溢れる図像学という素材、王道の本格ミステリ的密室の謎、細部まで張り巡らされ綺麗に解ける仕掛け、私の好きなタイプの探偵役とそれを解いてくれると信頼して仕掛ける犯人という構図、めちゃくちゃ私の好みど真ん中な作品でした。 久々に、名刺代わりの好きなミステリ作品ラインナップ上位に追加する作品が現れました。 このような素晴らしい作品と出会えて嬉しいです。 - 2025年8月1日
死んだ木村を上演金子玲介ミステリ2025年読み終わった死んだシリーズ3作目。設定、演出、台詞回し……まさに金子劇場!! 死んだシリーズは続きモノではないけど、死んだ〇〇が、生きている側に強い影響を残しているという共通点があるので、奇抜な設定と反対にシンプルな生と死が凝縮して描かれ、あっというまに読めるのに、毎作読後感が尾を引く。 いや、ホントに謎の読みやすさ。 クセが無い訳じゃない、むしろクセは強い文体(特にセリフに台詞をかぶせるのとか、数ページ跨ぎの台詞だけのやり取りなんかは紙面が文字でギチギチ)なのに、いつのまにか読み終えている。 テンポ? 疾走感? 肌に合うから? 理由はよくわからないのですが、毎度面白く読めています。 今回の設定も面白い。 大学の演劇研究会元メンバー4人に送られて来た脅迫めいたDM。 八年前に自殺した仲間の死の真相を探るため、自殺した場所に集まり、当時を可能な限り再現して〈上演〉する事で、4人はお互いや死んだ木村について深く知っていく……。 なので、途中、戯曲(脚本)のような演出がされていて、それも視覚的に面白い。 途中までは、映像化したら(役者は大変だろうけど)面白いだろうな〜と思っていたのですが、アノ仕掛けは無理ですねw ミステリ好きにはちょっと嬉しいサプライズ。 そして、中盤の地獄絵図を乗り越えての、フィナーレは、待ってました!の金子劇場。 死の真相は多分そうだろなぁとは思っていたけど(あまりにも序盤から色々散りばめられていたので)、だからこそ王道ストレートな展開で満足出来るというか。 こういう青春の残火みたいなノリが好きなんで、そこを変に外して来ないのが3冊目となると安心して読める。この作家さんの色というか、シリーズに求めるものでもあるので。 とにかく、今回も面白かったので、次回作も読んでみたい。 今メフィストで連載中の作品は死んだシリーズじゃないポイので、今までと違った色やテーマのものでも楽しみです。 - 2025年7月31日
死んだ石井の大群金子玲介ミステリ2025年読み終わったよくあるデスゲームもの、、、と思いきや、しっかりエンタメしている。 前作『死んだ山田と教室』が面白かったので読んだ。 文体も軽く、漫画みたいにスルスル読めるのでありがたい。 序盤は普通にデスゲーム。 理不尽にゲームに参加させられる333人の石井さん。 首輪は『バトルロワイヤル』、同じ苗字は『リアルおにごっこ』、子どもの遊びになぞらえたゲームは『神さまの言うとおり』……などなど、読んでいる最中は色んな既存作が頭を過ぎり、逆にここからどうやってオリジナリティを出してくるのか……と期待した。 前作も前半は男子校のおバカなノリにちょっと切ない青春小説からの、後半は死ぬこと生きることの意味を問う胸熱展開だったので、「このままただのデスゲームでは終わらないよね〜?」と。 その期待通り、デスゲーム参加者の一人でもある石井有一の失踪事件を追う探偵・伏見と蜂須賀の視点で、既存作との類似も作中で指摘され、石井有一の人となりも次第に明かされていき、「ですよね〜」と期待に応えた展開と、収束していく伏線をニコニコ見守らせてくれた。 後半に描かれたメッセージ性は、前作に共通するものがあるので、この作品から入った人は前作を、前作を気に入った方は今作も、ぜひ読んでほしい。 次は『死んだ木村を上演』を読もうと思います。 - 2025年7月25日
切断島の殺戮理論森晶麿ミステリ2025年読み終わった某メフィスト的な匂いのする、ある意味問題作な民俗学ミステリ。 民俗学×孤島という段階でミステリ好きの心くすぐるド定番食材なので、そこにどんな文化やルール、因習を持ってくるかが作家さんの色になるわけですが、欠損を美徳とする文化というのは中々尖っていて良いなというのが読む前の印象。 そこで殺人事件が起こり、もちろん孤島はクローズドサークル。それもド定番。 そこから何をしてくれるのか……と期待したら、なんだってwwwという予測不能な現象が主人公の身に起こり、この作品に向き合う姿勢(体勢)を変えさせられたw 以下ネタバレ。 正直、真犯人は事件が起こる前から違和感が沢山提示されている(真犯人との会話もね、島の人間なんだろうなって要素散りばめられているし)ため、簡単に見当がつくようになっているので、途中の超展開で「ああ、そういう系でしたかw」となったら、「え、てことは、あの約束って……」というところに興味が移って、最後まで楽しく読んだ。 とはいえ、ミステリは犯人当てゲームではないので、作中言われているように結末だけ見たら解るのに本文も読むのは、過程が見どころだからです。 次々に起こる殺人事件と、主人公達によるダミー推理が面白い。(というか、ダミー推理の方が正統なミステリ的かもしれない) 事件の核心に、美的感覚の違いだけでなく、二つの種族の欠損箇所の違いが活かされていたり、何故島の人間でない被害者の欠損が必要だったのか、など、ミステリとしても楽しく読めた。 ストーリー展開的にも、孤島から無事に脱出できるのかとか王道だけど、やっぱそれが異文化社会の孤島モノの醍醐味で、そこも超展開含めてどうなるんだろってワクワクできる。 余談ですが、あの状況から主人公補正の無い推しが島を出られて(その後も元気そうなのが確認できて)良かったです。 あの約束の結果(行動自体)は予想通りでしたが、グロテスクなホラーエンドを予想していたので、随分アクロバットな方法で一瞬だったのは予想外過ぎたw(寄生獣的な画だったな) 賛否分かれそうだけど、とにかく、色々ぶっ飛んでて読んでて楽しかった! これ、古き良きあの頃のメフィスト賞の匂いめっちゃする……と思ってたら、そういう評価ちらほら聞いて、だよね!ってなった。 続編ありそうなエピローグだったので、あるなら是非読みたいです。 - 2025年7月25日
怪人デスマーチの退転西尾維新ミステリ2025年audible読み終わった再読旅情ミステリ要素も楽しい、返却怪盗シリーズ二作目。 前回は閉鎖的な場所での事件だったけど、今作は国内屈指の観光都市・金沢が舞台ということで、金沢の名所や名物の描写が盛り沢山。 兼六園や茶屋街、ビブリオバウムなど、行ったことある人間としては読んでる最中ずっとニコニコです。 名探偵、刑事、弟妹など、前回からのクセの強いキャラ達の再登場も嬉しく、やりとりを微笑ましく読んでしまう。 なんといっても、謎が魅力的。 前回も玉手箱は魅力的な謎だったが、今回の金箔本も、前回以上に興味を惹かれる。 薄い金箔で作られた故に、開いてしまうと元に戻せないという本の中身はなんなのか。 何故読めない本を作ったのか。 初代怪盗は中身を読んだのか。 など、ワクワクする謎に引っ張られて、スルスル読んでしまう。 殺人事件の方は、それほど期待して読んでいないのもあって、そんなに印象的では無かったけれど、殺害方法はユニークで、動機も西尾維新らしいので、ファンとしては満足でした。 次回はシリーズ三作目にして、一旦完結と言われているので、三兄弟たちがどうなるのか楽しみに読みたいと思います。 今回はAudibleで再読したのですが、前作とナレーターさん代わっていたんですね。あまり気になりませんでしたが、今回の方もとても良かったです。 特に主人公の地の文での脳内ツッコミや、怪盗と怪人の兼六園での会話シーンが良かった。 若い男性の声も素敵な方ですが、怪人の変装してる状態でのお声、めっちゃ好きです。 - 2025年7月22日
怪盗フラヌールの巡回西尾維新ミステリ2025年audible読み終わった再読久々に読んだけど、やっぱり西尾維新らしさ全開で懐かしかった。 しばらく西尾維新作品を読んでいなかったのですが、人物名が、文体が、西尾維新!て感じで、著者伏せられても解るくらい西尾維新(何回言うの) 実在の地名なんかも出てくる現代舞台の話だけどフィクション的で、マンガを読んでるみたいな感覚でテンポよく読めるし、戯言シリーズを追いかけていた頃が懐かしくなった。 有名な怪盗であった父の汚名を返上するため、盗んだ盗品を元の場所や持ち主に返す二代目、〈返却怪盗〉という設定がまず面白い。 また、世を忍ぶ仮の姿として記者をしている主人公、父の親友であり初代怪盗のライバル刑事、警察から出禁をくらっているクセつよな名探偵、父が怪盗であると知り、家族バラバラになった弟妹……など、キャラも魅力的で流石。 海底にある大学兼研究施設という舞台で起こった密室殺人事件……という、魅力的な謎もフックが強い。 どんな研究が行われていたのか、関係者たちは何を知っているのか……徐々に明かされる秘密に、読む手が止まらない。 ミステリ部分は、本格的なトリックや緻密なロジックによる推理、納得のいく動機を期待して読んでいないというのもあるけど、そのへんもアクロバットで西尾維新らしい。 ミステリとして一番魅力を感じたのは、やはり玉手箱の中身について。こういうの上手い作家さんだよなぁと。 ラストで次回作があるんだろうなという展開になっているので期待。 あとがきもよかった。 今回、Audibleで再読したのですが、独特な単語やルビの遊びは、音声だと全ては伝わらないのが残念なのと、同じセリフを90回以上繰り返す表現は音声だとキツイものがあるw ナレーターの方大変だったろうなw 個性的な女性キャラも多かった作品だけど、男性ナレーターさんが上手く演じ分けていらしたので、とても楽しめた。
読み込み中...