
橘海月
@amaretto319
2024年7月21日
展望塔のラプンツェル
宇佐美まこと
読み終わった
児相職員の悠一は、虐待通報された家を訪れるが、肝心の子供には会えず。フィリピン人の母と暮らす海は、恋人の那希沙と彷徨う男の子を見つけハレと名づける。不妊治療中の郁美は、ベランダから見える家の子が気になって…。重く苦しくでも暖かい物語。
淡々と仕事を進める悠一の章と、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う海と那希沙と晴の章、そして子を授かりたくともできない郁美の章。それぞれに虐待された子が登場するが、行政にできることはあまりにも少なく無力だ。刹那的な幸せとわかりつつも、晴をかわいがる那希沙と海が愛おしくて胸が苦しい。
終盤に「そうだったのか…」とわかるシーンがあって、ひとつはずっとそうかもしれないと思いながら、もうひとつは全く気づかなかった。虐待は親から子へ連鎖すると同時に、周囲を否が応でも巻き込み「何もできなかった」と深い後悔をもたらす。だからこその行動に、そっと背中を撫でてあげたくなった。