虚実書店マボロシ "姫君を喰う話" 2025年12月30日

姫君を喰う話
姫君を喰う話
宇能鴻一郎
「姫君を喰う話―宇能鴻一郎傑作短編集―」宇能鴻一郎 新潮社から出た傑作選。 これは面白い。 宇能鴻一郎のことは何も知らなかったけどタイトルに惹かれて読んだ。どの話も濃密な文章世界に人々が息づき暮らしている。 匂いとしてはマルケスの作品にすごく近く感じた。その場にいるような土俗的な臨場感なのに距離を置いた冷静な観察眼からマジカルな何かが描写される。 短編集でどの話も面白い。 「鯨神」は日本版「老人と海」かと思ったら、鯨をとって暮らす人たちの様子が何から何まで描かれているような壮大なスケール。切迫した人々の内面と徹底的に向き合っているようみ見える。すごい。 「花魁小桜の足」は当時の出島と遊郭にまつわる様子が垣間見えて面白い。ユーモア度も高いと思う。人物たちも小気味よくて他作品よりは気軽な分楽しかった印象。 「西洋祈りの女」は、見たこともないはずの田舎の景色が、まるでそこにいるかのように目に浮かぶ。時代も育った場所も反対だと思うのに。物語があるようでないような日常描写なのに面白い。 「ズロース挽歌」はちょっとキツイ。すごく面白いく笑えて悲しいけど、題材がちょっと。そして、男はいつになっても変わらんな。という諦観もまた良い抜け具合。 「リソペディオンの呪い」は物悲しくて良かった。何がどうとういうわけではない人間の在り方を想像してしまう。こんなものが書けるなんて人間てすごい。
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