K.K. "九井諒子作品集 竜のかわいい..." 2025年3月9日

K.K.
@honnranu
2025年3月9日
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子
第三話「わたしのかみさま」福原雪枝は海洋学者を目指して私立中受、塾の模試でC判定を食らう。落ち込んで山中のベンチでさかな図鑑を見ていると、さかなの姿をしたかみさまに話しかけられて…。使えるものはとさかなのかみさまを助けて、合格を祈願する。しかし山が開発されたあおりを受けてかみさまは消えてしまった。今の自分の実力では合格は厳しい事を悟る雪枝は、消えゆく野山とそのかみさまを自分に重ね合わせて、その盛衰を我が事として悲しむ。父が雪枝にかける言葉が優しい。考えて選んだものを発しているみたい。ちゃんと雪枝の不安を受け止めてあげるのが、きちんと"親"をしていて良い。かみさまは雪枝の部屋の水槽をねぐらとして復活するのだけど、それを受けて雪枝の一言目が「受験に間に合ってよかった」なのが、子供らしい浅はかさを感じられて良い。恐らく小学六年生なのだと思うのだが、年頃の少女のファッションと水飛沫のリアリティに比べて、温故知新とか弱肉強食と書いてたり、(6+2-3+4-5)÷5という算数が黒板に書かれたシーンがあったりといった要素から、作者の中受の解像度の低さを窺わせ、両者の落差におかしみを覚える。溢れんばかりに鮨詰めにされたかみさま、草木や季節の景観、水槽内など自然物。工事現場に新築マンション、ホームセンターなどの人工物。画面に溢れる活写は、作者の描画の実力を思わせる。最後のページは思わず笑った。表紙の雪枝ちゃんかわいい。
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