
橘海月
@amaretto319
2025年7月13日
カインは言わなかった
芦沢央
読み終わった
#ミステリ
あゆ子の彼の誠は、誉田率いるHHカンパニーの主役に抜擢された。バレエとコンテンポラリーダンスを融合した舞台は海外からの評価も高い。だが誉田の稽古は厳しく、追い詰められた誠は公演間近、あゆ子に「カインにでられなくなった」と告げて消息を断つ…。
誠の彼女あゆ子を皮切りに、誠のルームメイトで同じ舞台に立つ尾上、誠の弟の彼女と視点が次々に変わるも、際立つのは演出家誉田の独善的で高圧的な稽古だ。多くの舞台を手がけた某演出家を彷彿とさせるそれは、演者を人格否定し傷つけ時には再起不能にさせる。成功と称賛とセットで語られるからこそ、大嫌いなやり方。
誠が失踪した理由も、他の色々な謎も、最後にはきれいに決着するが、やはり誉田を彼のやり方をどう見るかが物語の重要な鍵だと思う。映画「セッション」の指導者然り、罵声と恐怖で演者を追い詰める指導そのものが「それがないと舞台が成立しない」のなら、そもそも成り立たなくていいよと声を大にして言いたい。