
おきゃりゃ
@aya12
2025年12月31日

風と共にゆとりぬ
朝井リョウ
読み終わった
昔、毎週楽しみにしていたフジテレビのバラエティー番組『めちゃ×2イケてるッ!』で、トラウマを植え付けられた放送回を思い出した。当時伊勢志摩で開かれたG7になぞらえて、7人の痔保有者が痔という病気を周知させ、面白おかしく肛門のケアや治療の重要性を説く「痔7」という企画だった。若さゆえに機能的にも審美的にも申し分ない肛門を持ちあわせていた私だったが、生まれて初めてその奇跡に涙した。だが、これから訪れるかもしれない未来に恐れ慄いたのもこの時だ(まじで怖かった)。それ以来、排便に臨む際は先人たちの後悔・反省を反映したマニュアル通りに遂行してきた。トイレに座りながら一つ一つ指差し確認。武士のような隙のなさ。完璧だ。
それからおよそ10年——人はないもの(痔)に対してそう長く同じ熱量で臨めないわけで。かくいう私もそんなトラウマをしっかり忘れ去って息をするようにうんこしていた。そんなときにこの本を読んだ。絵本によく登場していた河童や天狗などの妖怪が、何年もの時を経て実写版となり眼前に現れた感覚だった。かつて痔は『めちゃ×2イケてるッ!』の中で、ポップな自虐として笑いに変換されていた。しかし本書は、その変換を許さない。語り口はファニーではあるが、笑い切る前に後悔と痛みが追いついてくる。しかも、痔のラスボスとも言われる痔瘻。細菌によって2個以上肛門ができる。ん、どゆこと???え、なんで????そんな疑問は構造では理解できても感覚的に理解しがたい(というかしたくない)。しかし本書は、なぜそんな不要な穴を作るまで放置してしまったのか、その経緯を人間の愚かさや弱さとともに教えてくれる教訓的な叙情詩となっている。もっとも、そこに描かれている愚かさは決して筆者ひとりのものではなく、誰の中にも大なり小なり潜んでいる怠惰でもあるので簡単には笑えない。そして、小さい頃は痛みを感じれば大人たちが勝手に騒ぎ大ごとにしてくれ、最優先に治療してくれていたが、大人はそうはいかないことも思い知らされる。痛みが稲妻のように身体をつらぬいても、変わらず仕事はある。今すぐ手術をしてほしくても、空き枠がない。大人ってなんて世知辛い。
だからみんなに読んでほしい。必要以上に肛門を作らないために。