橘海月 "互換性の王子" 2025年11月15日

橘海月
橘海月
@amaretto319
2025年11月15日
互換性の王子
互換性の王子
雫井脩介
創業者の息子で事業部部長の成功(なりとし)は、父の代わりに参加したゴルフの後、別荘地下に監禁されてしまう。水や食料はあるものの、外部と連絡がつかず半年が経過、ようやく逃げ出して会社へ行くと、自分は勝手に退職したことにされていて、自分のポストには腹違いの兄実行(さねゆき)がついていた…。 何者かに監禁される冒頭こそミステリぽいが、読み進めると、池井戸潤が描く会社もののような側面が強くなる。辞めたことにされ元の部署に戻れず営業部に配属された成功は、それならば仕事で評価されたいと奮闘する。それまで恋心を抱いていた女性と、今の部下の女性との恋愛模様も描かれ、どちらとうまくゆくのか行方も気になる。 それにしても、著者の作品は初読だった『火の粉』から『望み』まで、主人公が“どっちだ?”と悩む場面を描くのが巧みだ。この男は無実か犯人か、息子は被害者か加害者か…?つい読み手は主人公に感情移入し、心が掻き乱される。この本にもその手の謎があり、一筋縄ではいかない深みが増していた。
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