
灰
@okonomiyaki
2026年1月1日
横しぐれ
丸谷才一
読み終わった
なんとなくとっておいた(もったいなくて)のを、記念すべき新年の1冊目として読んだ。思わず、うぅむ、こ、これは…と読んでしまう本作は間違いなく丸谷才一先生の代表作としてかぞえたい。
丸谷先生曰く、グレアム・グリーンの自伝に、グリーンの父親とオスカー・ワイルドにまつわる逸話があったそうだ。そこに感銘を受け、これは小説になる!と思って書かれたのが『横しぐれ』なのである。
そしてジョイスやナボコフの影響もあり、文学から文学を作る書き方をここでは目指したそうである。
国文学者である「わたし」は、父と父の友人の黒川先生(わたしの恩師)が愛媛の松山に旅行に行った際に、不思議な乞食坊主と酒を酌み交わしたエピソードを聞く。つまり『横しぐれ』の「わたし」はグレアム・グリーンで、その父(+黒川先生)がオスカー・ワイルドにあたる乞食坊主に松山で出会う、というのがこの物語のフレームになるわけである。
この乞食坊主が本作ではある著名な俳人として疑われ、「横しぐれ」というキーワードをもとに、文学探偵とも言うべき「わたし」が文献を遡り、推理を深めていく物語なのだ。
この文献へのあたり方と、考察がもうなんというかスリリングかつ文学者丸谷才一としての趣味的に耽溺しているさまが垣間見えるような気がして、ひじょうに心地よい。
この「わたし」の一連の文学的推理を追体験することを通して、われわれは日本文学史をあらためてなぞらされるのだ。
これが文学から文学を作るということなのだろう。
