
橘海月
@amaretto319
2022年1月16日

BUTTER
柚木麻子
読み終わった
#揺さぶられる
週刊誌記者の里佳は、婚活サイトで知り合った男性を次々と殺害したとされる被告人梶井の取材を試みる。「レシピを教えてと頼んでみたら?」親友伶子の助言のおかげで梶井と面会した里佳は、彼女の熱量に導かれるように、それまで手にしていなかった高級バターを購入して…。
明らかに実際にあった有名な事件を彷彿とさせつつ、読み進めるうちにあくまで物語の中の梶井の言葉に里佳だけでなく翻弄されてゆく。特にきちんと食事するようになった里佳が、痩せ過ぎからぽっちゃりになるにつれての周囲の反応と、梶井のそれとが皮肉めいていて、自分の偏見すら浮き彫りにさせられた。
そして、周囲を翻弄する梶井に振り回される形で里佳が遭遇する出来事、特に料理に関する部分や料理教室の人々とのエピソードにとても勇気づけられた。なんとなく、キャスリーン・フリン『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』を読んだ時に近いものを感じた。生きるための、自身を肯定するための、自分のために必死に行う料理。
『BUTTER』は、色々な視点の面白さがあった。羊たちの沈黙のレクター博士と向き合っているような、ぞわぞわとした怖さもあれば、信用ならない証人を相手にしているような取り留めのなさもある。インタビューしているつもりが、いつのまにか立場が逆転してこちらが事実を突きつけられているような不安も。
ひたすら圧倒される物語だった。おすすめ。


