
紫嶋
@09sjm
2026年1月3日

書物の敵
ウィリアム・ブレイズ,
William Blades,
高宮利行,
高橋勇
読み終わった
借りてきた
元となるのは19世紀イギリスの書誌学者、ウィリアム・ブレイズが啓蒙も兼ねて記した書。その完全かつ純粋な日本語訳は、この本が初めてかつ唯一となる。
「書誌学」という学問の存在を、私はこの本を読むと同時に初めて知った。物(ガワ)としての書物の有り様や取り扱われ方を研究分析する学問…というところだろうか。古の巻物や羊皮紙に記された写本から、現代の印刷技術で大量生産された本に至るまで、全てが研究対象になり得る。
古い書物であればあるほど、現物が失われていたり不完全であったり、原本がなく不確かな写しやさまざまな記録から情報を集めるしかないことは想像に易い。
この『書物の敵』はタイトル通り、古来から絶えず書物の敵となり続けてきたさまざまな要素を、火や水、埃や虫、人の手による破壊など章ごとにまとめ上げている。
そこには、書誌学に向き合ってきたブレイズ本人の経験や想いも多分に含まれているのだろう。きっと自身の研究を進める中で、抗えない天災で失われた書物を思って悔しさを味わったり、無知や軽率さからくる人災で損なわれた書物を知って憤まんやる方ない思いを抱えたりしたのだろうな…と文章の端々から滲み出る彼の嘆きや怒りから推察される。
21世紀の今においても、火や水は常に書物の敵であり続けているし、ブレイズが本を記した当時と比べれば幾分かマシになっているとはいえ、本を雑に取り扱う人や本の価値を顧みない人によって、今なお書物は損なわれ続けている。
読書家、特に紙の本を好んでいる人がこの『書物の敵』を読んだなら、きっと書かれている内容やブレイズの想いに共感できると思う。
そしてまた、彼の時代にはなかった、現代ならではの書物の敵についても思いを馳せたくなる。読書人口の減少、デジタル化の推進、図書館や大学など文化施設の予算も減らされるこの時代において、紙の書物は果たして適切に守られ残されていくのだろうか。
本文の最後に添えられている、ブレイズの後書き文がまた良い味を出している。ここに込められた「書物愛・読書愛」は、時代を越えて通ずるように思う。

