
しゅう
@shuu62
(ネタバレ有)
読了。詩情豊かな、美しい文章で綴られた短編であった。
花菖蒲が浮かぶ川のせせらぎまで聞こえてきそうな情感たっぷりの物語で、どのあたりがミステリなんだと思いながら読み進めると、1つの事実が明らかになってから、苑田岳葉の心中事件は様々な見方を提示してくる。
緊張感のある展開に、背筋に少し薄ら寒いものすら感じる。
人間の情とはかくも恐ろしいものかと思い終盤に進むと、物語は甘い靄に包まれたかのような終わりを迎えた。
謎の心中事件にまつわるミステリとも、儚い心中物語とも、苑田という稀代の歌人の妄執に囚われた悲劇とも取れる、多面的な見方が可能な文学作品である事が、傑作といわれるゆえんなのかと思った。
