
amy
@note_1581
2025年3月10日

怖ガラセ屋サン (幻冬舎文庫)
澤村伊智
かつて読んだ
感想
澤村伊智
私はホラー作家さんについては何を恐怖の対象とするかについてよくよく考えてほしいと思っている
それは恐怖というものは取り扱いがかなり難しい感情で、もちろん根源は身の危険を察知し命を守るためのアラームとしての感情だろうけれど、自分たちがよく知らないもの見慣れないものへの”これは自分のことを脅かすものだろうか”という疑問が恐怖に代わり、それらが偏見や差別の原因となってしまうからでもある
澤村伊智の「怖ガラセ屋サン」は連作短編集で、それぞれ都市伝説のような怪談のようなそれらのグラデーションになった怖い話が収録されている
その短編のなかにこういう文章があった
”他者を攻撃し、差別し、排除する。そうした愚行の発端となるのが恐怖だからだ。”
この文章は私がホラー小説の書き手に求めているものだった。実際こういう認識を持ってホラー小説を書いているような作家さんはあまりいないように思える…。悲しいことだが
澤村伊智の作品を思いっきり楽しめるのもこうした彼の考えが作品にきっちりと組み込まれているからだ
また「一番怖いのは人間」というようなしゃらくさい言説への痛烈なカウンターとなる作品も収録されている
たしかに積み重なる不穏とそこからぼこぼこと粘性の高い液体が沸騰したときのような恐怖が味わえた
