
灯
@atoki123
2026年1月10日

硫黄島
石原俊
買った
読み終わった
イーストウッド「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」を見たことを思い出しつつ。
硫黄列島(小笠原群島も)の住民の歴史経験から近現代社会史を記述し、地上戦に関する言説一辺倒の状況を異化する。また、アジア太平洋世界での位置付けをも探る。
1870年代の帝国的拡大の中で、硫黄島もまた日本に領有され、プランテーション社会として、製糖業やコカイン栽培がなされていく。南洋植民地開発のモデルのような社会の中で、住民は会社に搾取されつつも、肥沃な土地の作物や漁業により暮らしていた。しかし、太平洋戦争下の1944年に住民の強制疎開がなされる。(驚くことに、硫黄島産業株式会社は住民に「偽徴用」を行い、徴用されていない人を労働力として利用した上で、戦争に巻き込ませた。最悪…)戦後はアメリカが軍事利用を進め、1968年にベトナム戦争への批判ムードが高まる中でその緩和のために南方諸島の施政権を返還するが、硫黄島と北硫黄島は自衛隊により基地化され、現在も居住することが許されていない。
沖縄戦を「住民を巻き込んだ唯一の地上戦」とする言説がしばしば見られるが、硫黄島もまたそのような戦闘が行われたのであり、「外地」もまた同様であった。歴史認識の変容を迫る書籍。硫黄島や北硫黄島のかつての住民が高齢化する中で、すべての住民が亡くなり、記憶が失われるのを国は待っているのだろうかという言葉には怒りが感じられる。ハンセン病者をめぐる記憶が忘却されるのを待つかのような国の態度と通底する面も感じられるな。とても勉強になった。
