
がみ
@ottoto-dameda
2026年1月10日
読み終わった
ーー私は当初、「単独無酸素」の矛盾に気づかなかった。
ーー私は、「裏取り」という取材の基本を忘れていた。
ーー私は、映像の面白みと「夢」という心地よい言葉に乗っかって、タレントのように彼を描いた。
ーー私は、彼の死によって再認識した。……人間を安易に謳い上げるのは危険なことだ。その人間が「生死に関わる挑戦」を行っている場合はなおさらだ……と。
ーー栗城さんを死に追いやったのは……私かもしれない。(P272)
「元ニートの登山家」と称され、七大陸最高峰単独無酸素登頂を目指した栗城史多さんを描いたノンフィクション本。
はじめは栗城氏の人となりが描かれるたびに、無責任な人だな、悪い意味で子供っぽい人だなという印象を抱いていたが、エベレスト3度目のチャレンジのあたりから抱く心象が変わってくる。
あまりにも痛々しい。
踏破できそうにない難ルートを選ぶ。現地に行くのも遅く、事前準備はほとんどしていない。意図の見えないステイやルート変更などなど…。
行動がもう登りたくないと示しているように私には見えてしまう。
誰だって気が進まない場所に行かなければならないときは腰が重くなり、わざと遠回りだってしてしまう。それがエベレストという世界最高峰の正念場で起きているような…そんな印象を抱いた。
栗城氏の行動を見ると、登るだけじゃダメだったの?と言いたくなるが、この本の中でも最年少登頂、最年長、最短、単独、無酸素、世界初…こんな記録がひしめいている。
そんな中で夢を謳い、たくさんのスポンサーをつけファンもアンチも多くつけてきた栗城さんが「単独」「無酸素」といった称号を追い求めてしまうのも無理はないと、そう思う。
登山という行為の功罪をひしひしと感じた一冊だった。