Moonflower "ヘリオガバルスまたは戴冠せる..." 2026年1月10日

ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト
ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト
アントナン・アルトー,
多田智満子
Ⅰ 精子の揺籃 Ⅱ 原理の闘争 Ⅲ アナーキー 【感想】 23年ぶりの再読だった。 澁澤龍彦に導かれて手に取り、わけがわからないなりに妙な高揚感に包まれて読了した覚えがあるものの、あらためてアルトーの特異すぎる思想/文体/論理に翻弄されるばかりだった。 評伝でも歴史小説でもなく、「狂帝」ヘリオガバルスに材を採ったアルトー流「アナーキー序説」とでも呼ぶべきテキストなのだが、明晰な哲学的言辞と豊穣な詩的イメージが境界をもうけることなく溶けあっているため、難解というより本質的に読解が不可能であり、それゆえに「読める」パートの喚起力が異常に高い。(それがアルトーなのではあるが) それにしても、ヘリオガバルスの何と奇特な人生であることか。これほど存分に古代シリアの宗教的世界観を背景として辿っているのに、この少年皇帝の人間としての悲哀ばかりが不思議なくらいに迫ってくる読後感があり、アルトーは彼と自らとをどれくらい重ね合わせていたのだろうか、などと思ったのだった。
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