たまき "イン・ザ・メガチャーチ" 2026年1月24日

たまき
たまき
@naoki0904
2026年1月24日
イン・ザ・メガチャーチ
推し活をメインテーマに三者の視点から物語が語られてゆく。 心の隙間に供給される推しという存在に心酔する者、ファンダムを築き搾取する者、陰謀論に支配され没落する者。今の社会で生きづらさを感じているであろう人間の描き方の解像度が高い。共通して、視野狭窄の極みの中にあるのに『視野が拡がった』という実感を備えていることが印象的だった。 自身の未来に対する不安感や空虚感。どことなく若者の間に漂う、閉塞感、衰退感、無力感がこの国にはある。 どこかで読んだ話、人間は所属する集団において、必要とされ、誰かを必要と出来るような環境で一番幸福感を抱くという。 人間は社会的な生き物なので、どこまで行っても人との繋がりを断てないし、コミュニティに属して、そこで必要とされたいという欲求がある。現代はあまりにも他者との比較をしてしまいやすい社会になってしまったが故に、心を病みやすく孤立する人が増えて来たように思う。 どの時代でも宗教や伝承で利用されてきた様々な物語。 物語には、多くの人間の根幹となる思想をコントロールしたり、治安を維持するほどの力がある。強く信じるが故に、思想が違える者同士で今も戦争が起きている。 先進国をはじめ、成熟した社会においては無神論者が増えていく傾向が強いらしいが、人々は熱中出来るもの、自分を救ってくれるもの、自分の中の神(物語)を渇望しているように思う。 だって、何かを心から信じている方が、それに付いていく方が楽だから。陰謀論でもなんでも心から信じられたなら楽だろう。 直視するには今の世の中はあまりにも生きづらいし、特にSNSはネガティヴな情報に溢れているし、それを見るのを止めることも出来ない。と、思っている人が本当にたくさんいるだろうと思う。自分もその中の一人だろう。 視野狭窄した情報弱者や社会的弱者、悩める人間には物語を利用することが一番都合良いというリアルさとえげつなさ。それを利用する事の恐ろしさ。最近のビジネスは何にしてもユーザーを依存させたもん勝ちだなととにかく思っていたが、本書にはそのことが書かれていた。 人生という名の大海原を漂流しない為に、自分の中での指針は必要だと改めて感じた。これは自分の哲学だが、指針はただの消費活動や仕事からなどではなく、趣味だったり、無駄と思えるような経験、主に能動的な活動により自己の中で形成されてゆくと思っている。なんとなく心地の良い方にただ流されてはいけない。思慮深く物事を洞察し、俯瞰し、判断していくことが大切だ。 物語に呑むか、呑まれるか。 全ての選択肢が正解であり、正解でない現代。 視野をあえて狭くして脳を溶かして物事に没頭する幸福こそ唯一の救い説、という提起があった。だが、その後に残るのは文字通り物理的にも精神的にも空っぽの何も持っていない人間だ。なかなかむごい。 色々と身近に感じる部分が多く、本当に読んでよかった。
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