白川みどり "愛と欲望の雑談" 2024年7月23日

愛と欲望の雑談
愛と欲望の雑談
岸政彦,
雨宮まみ
容易に結論づけず、あわいをそのままに。そうやって広がり、深まっていく対話。日本人は一般的な他者に対する信頼がものすごく低く、犠牲者非難が強い/攻撃性は恐怖感の裏返し/みんな自分のしんどさを守っている。個人のしんどさが聖化されて、結果的に「しんどいほうが偉い」になってしまっている/今は、持っていない者が持っている者をバカにする。差別のあり方が逆転した。など…。(主にXを見ていて)感じていたモヤモヤの正体、またはついギクリとしてしまうような自身の思考の癖が、この本には書かれていた。本書は2016年に出版されているが、こういった世の中の風潮は当時から変わっていないどころか、深刻化しているように思う。 "「実際に会ってする会話」には、無駄も危険も多い。けど、そこにはまだ、そこにしかない豊かさがあるとも感じている。(中略)なんの意味もないような言葉から、お互いの輪郭が見えてきたりする。" 実は年齢を重ねるにつれて、会話への苦手意識がどんどん強まっている。それは、雨宮さんがお話されているように、危険が多いから。失言し、相手を傷付けることが怖い。けれど、実際に会って話をするからこそ、生まれるものがあることも知っている。そして、私が/私たちが/世の中がより良く変わっていくためには、今、思いを真摯に伝え合うことこそが必要なのだと思う。読み終えてから、この本が雨宮さんの最期の著書だと知った。臆さないでと、豪快にそして優しく、背中を押してもらったような気持ちになった。
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