
noa
@noa3373
2026年1月27日
今だからわかること 84歳になって
末盛千枝子
読み終わった
平明に丁寧に書く人は、書かなかった言葉も相手に届けられるのかもしれない。紙も写真も言葉も、編集者として美しいものを求めてきた末盛さんの思いを感じた。
末盛さんの講演会に大阪まで出掛けたことがあった。
その時、長男の武彦さんがスポーツ中の事故で長期に入院されてる最中で、武彦さんが雑誌に寄稿した「祖父の顔」のコピーも配布された。
武彦さんは意識が戻った時に「これは滅多にないような事故で、自分にぶつかった人はどんなにか辛いだろうか」というメモを筆談で渡したという。
自分が下半身のまったく動かない体になり、脳梗塞で倒れ、左手だけで彫刻を作ってきた祖父のすごさが初めてわかったという文章は、どこか自分の悲しみを遠く見つめているようで、心に沁みて仕方なく何度も読んだ。その紙は今でも大切にすえもりブックスの舟越保武さんの本の好きな箇所に挟んでいる。
この講演の8年後、末盛さんはすえもりブックスを閉じて、血液の病気を患う夫と車椅子の武彦さんと一緒に岩手県に移り住んだことを本から知った。
読み終わってから見ようと決めていた日曜美術館「人生で美しいとは何か 彫刻家・舟越保武と子どもたち」の録画をやっと見た。そこには末盛さんの八幡平での暮らしぶりを伝える姿だけでなく、生前の保武さんや桂さんの姿、苗子さん、茉莉さん、直木さんやカンナさんの作品も知ることが出来て、本に合わせて見ることが出来て本当に良かった。
「次男へ」で、春彦さんの心根の優しさに感動し、末盛さんにこんな息子さんがいることに安心した。春彦さんが撮影した冬の風景はとても美しい。
そして、武彦さんがどんな風に亡くなったか、たんたんと書かれた文章に、末盛さんが自分の悲しみを的確に語る短い言葉に、胸がつぶれて泣いた。まるで聖人のような最後に思えて仕方なかった。
2人の夫も、武彦さんも先に逝き、1人で暮らす末盛さんが、今だからわかること。それは末盛さんだけでなく、最後になってわかることが人にはあるような気がする。
「神のなされることは皆その時にかなって美しい」と、ひとりの牧師から伝えられた言葉が、クリスチャンでもないのに、私の心の奥底にずっとある。





