
りなっこ
@rinakko
2026年1月27日
水と自由
上川涼子
読み終わった
透徹した眼差しがひりりとする。
〈春宵にこつりこつりと円を描く銀のコンパス、そして青鷺〉
〈月、そしてそこから冷えてゆく音叉 ひかりにみちて鳴ることもなし〉
〈みづからを脱ぐ仕草にて波生(あ)れて海の裸身のはげしかるべし〉
〈浮彫りの花にかぐろき影わたり睡眠口座に貨幣の熟睡(うまい)〉
〈クレスカは花冠のごとく文字に咲きスタニスワフ・レム スタニスラフ・レム〉
〈心臓をひとつ点して現し身は白夜、ひとよを燃え尽くるまで〉
〈冷えびえと床にビー玉散りみだれ乱り尾をひく孔雀見ゆ、見る〉
〈肌の上に青く重なる薄絹をとどろきののち雷(らい)と知りたり〉
〈死ののちへ続く渇きか紫陽花に羊皮紙の質感をみとめつ〉
〈カルヴィーノ読まばや夏の浜に似たカルビーのポテトチップス溢して〉
〈鏡の、十指を押せど触れやうのなき奥行きへ深まりてゆく、秋は〉
〈不可解な着こなしになほ際立てる人間的底力おもふも〉
〈わが閉ざすのち一冊の小説は少し膨らむ息づくごとく〉
〈たひらぎてはなびらを待つ水の時その時を揉み魚ら泳ぐも〉
〈雨は傘を脈打ちながらしたたりてこころに至る不可思議のこと〉
〈音楽にとりのこされた一脚の椅子がいま自壊すればいいのに〉


