
プールに降る雨
@amewayamanai
2026年2月10日

ステレオタイプの科学
クロード・スティール,
北村英哉,
藤原朝子
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まだ読んでる
出版されたころにラジオで薦められていた。
米国の社会心理学者がステレオタイプがいかに人びとの思考・行動に影響するかを実験結果とともに紹介する本。分量もそれほどなく読みやすい。
著者の疑問から仮説を立てて検証していく過程が、そのときどう考えてそうしたかという思考とともに詳細に書かれている。
大きな謎の解明に向かっていくミステリのような読み味もある。
研究者がどのような思考プロセスを経て事実を積み重ねて問題にアプローチしていくのか追体験できるような書き方になっている。
第1章
アイデンティティ付随条件=特定の社会的アイデンティティを持つがゆえに対処しなければならない物事。
ステレオタイプ脅威=アイデンティティ付随条件のひとつ。自分が属する集団の特性(ステレオタイプ)に自分が当てはまるのではないかという恐れ。間主観性(自分は他者からどう思われているかという認識)から生まれる。
第2章
ミシガン大学での黒人(マイノリティ)学生の成績不振の謎。
観察者の視点と行為者の視点の違い。
数学が得意な女子学生がテストで男子より点数が低くなる理由。
スティグマ(社会的烙印)によるプレッシャー。
事前に結果に男女差はないテストだと説明するとその通りになる。
第3章
スタンフォード大学で白人学生と黒人学生に英語のテストを受けさせる。事前に学力テストだと説明すると黒人学生の点数が下がる。解き方の調査だと説明すると白人と同等の点数を得る。黒人は知的能力が低いというステレオタイプを追認するのではないかというプレッシャーによる影響。
第4章
パッシング(色白であることを利用して白人として生きること、人種を変えること)によってアイデンティティ付随条件を変えたアフリカ系アメリカ人文筆家、アナトール・ブロヤード。双極性障害というアイデンティティに脅威をおぼえる学生。
“人はしばしば、自分が忠義を感じるもの(アイデンティティ)のうち、最も攻撃を受けているものによって自分を定義する。そして、自分がその忠義を防衛する強さを持たないとき、それを隠す。するとその忠義は闇に深く埋もれて、報復のときを待つ。しかし、それを認めるか隠すかにかかわらず、また控えめに宣言するか誇示するかにかかわらず、その人物が自分のアイデンティティを考えるときは、この忠義が伴われる。すると、それが肌の色であろうと、宗教や言語、階級であろうと、その人物の全アイデンティティを征服する。”『アイデンティティが人を殺す』アミン・アマルーフ著
脅威にさらされたアイデンティティは、他のどんなアイデンティティよりも重要に感じられる。
第5章
元々ないステレオタイプの脅威も受けることがある。「アジア系は白人より高得点を取る傾向がある」と言われて数学のテストを受けた白人男子学生は、言われていない学生より間違いが多かった。
どのステレオタイプを意識するかによって結果が変わる。アジア系女子学生の数学テスト。アジア系→数学が得意、女性→数学が苦手というステレオタイプ。直前にアジア系であることを意識させるアンケートを受けた場合、正答率が高くなる。女性であることを意識させられると正答率が下がる。
第6章
能力の上限レベルを試されるとき→ステレオタイプ脅威によるフラストレーションとそのステレオタイプが誤りであると証明しようとするモチベーションが高まる→実力をフルに発揮できない。
能力の範囲内でこなせるレベル→フラストレーション低下→ステレオタイプの誤りを証明しようとする努力は他の集団を上回る成績を収める。
第7章
ステレオタイプ脅威にさらされる→血圧上昇、脳のワーキングメモリが脅威に対処するため悪化→パフォーマンスの低下。
ジョン・ヘンリー:19世紀末の伝説的な鉄道トンネル作業員。蒸気ハンマーとの杭打ち競争に勝利するもゴール後命を落とす。
黒人に高血圧が多い謎。過酷な環境下で困難に打ち勝つ努力をつづける(ジョン・ヘンリー度が高い)と、高血圧になる?
第8章
クリティカルマス=特定の環境で少数派が一定の数に達した結果、居心地の悪さを感じなくなること。
ミシガン大学でのアファーマティブアクションに関する訴訟:学部と法科大学院の入学審査におけるマイノリティ学生への加点を不服とした白人学生による訴え。最高裁で合憲と認められる→クリティカルマスの達成につながる。
この訴訟に関わった女性初の最高裁判事オコナー。二人目の女性判事ギンズバーグが就任することでクリティカルマスを感じる。
アイデンティティの安全が確保されれば、種々のステレオタイプ脅威のサインの威力は軽減される。
第9章
最も長い章。書き方がくどく、要点が捉えにくい。訳者が変わったのかと思うくらい読みにくい。
ナラティブをネガティブなものからポジティブなものにすることで、ステレオタイプ脅威を減らすことができる。
自己肯定化(自分にとって最も大事な価値とその理由を書かせる)によってステレオタイプ脅威の軽減→成績上昇。
第10章
ステレオタイプ脅威による分断。人種差別主義者だと思われること(みずからの集団に持たれているステレオタイプを追認すること)を避けるために黒人と距離を取る白人。人種、貧富、文化などによってアメリカ社会が分断される原因は、差別意識よりステレオタイプ脅威である可能性。

