紫嶋 "観応の擾乱" 2026年2月1日

紫嶋
紫嶋
@09sjm
2026年2月1日
観応の擾乱
観応の擾乱
亀田俊和
室町幕府黎明期、足利尊氏と直義の兄弟同士が争った内紛「観応の擾乱」について、そのきっかけ、経緯、経過、顛末までを細かく解説した、非常に読み応えのある新書。 短い期間で優劣が劇的に入れ替わり、勢力の分布や敵味方の構成も絶えず変動する内乱が、わかりやすくまとめられている。 日本史に疎く、武将の名前もろくに覚えられないような私でも混乱することなく、むしろ歴史の面白さに引き込まれて、手に汗握るような気持ちで読み切れたことに感謝である。 また、擾乱期の戦のみならず、並行して幕府で誰がどのような政治を行なっていたかについても書かれているため、結果として室町幕府の初期の頃の組織や政治のあり方についても理解が深まった。 表面的には兄弟の争いとされる「観応の擾乱」だが、詳細を追えば追うほど、社会情勢や取り巻きらの思惑が複雑に絡み合う状況が見えてきて、兄弟当人らは本当はどうしたかったのだろうか……と一抹のやるせなさが残る。 結果的に勝者となったのは兄の足利尊氏だが、彼が「何をしたのか」は伝わっていても、「何を考えていたのか」は明確には見えてこない。歴史とはそういうものだというのを差し引いても、尊氏という人物はどうにもわかりにくいな、と感じる。 彼に焦点を当てた学術書などを、もう少し読んでみたいという気持ちになった。 本書は「観応の擾乱」について知りたいという方には大変おすすめできる一冊だが、一方で足利兄弟、とりわけ尊氏をどのように評価するかについては、少々筆者の私情というか、尊氏に肩入れする形での感情論・精神論的記載がわずかに入り混じっている点には注意が必要と思う。 もっとも、そもそもの前提として足利尊氏を朝廷(天皇)に対する逆賊とみなしたり、室町幕府を低く評価したりするような風潮が戦前戦中に生まれていることもあり、それに対する反論の意もこもっているのだろう。
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