ワタナベサトシ "暇と退屈の倫理学" 2025年3月12日

暇と退屈の倫理学
しばらく積んでいたのを読み始めたところあまりの面白さに止まらなくなり、あっという間に読了。通読することが肝心な構成の書籍であるので、企図されたとおりの最も良い状態で読むことができたのは運が良かった(自分の中でタイミングがうまく合致した)。 暇と退屈の発生から、暇や退屈を定義してゆく過程など、噛んで含めるように丁寧に、何度も傍点をふって強調を重ねて、混乱しないよう・迷子にならないよう、分かりやすく親切な説明が徹底されていると感じた。難解な概念も言葉(用語)を統一することで論点が明確になるよう誘導されているし、哲学についてほとんどなにも知らない状態からでも分かるようになっていると思う。 注釈(読まなくてもいいとされている)も適度な分量だし、参照文献もいちいち興味をそそられる。気になって読みたくなる本がいくつも登場したのでどんどんReadsに登録した。ハイデッガーを読むことはこの先もないと思うのだけど、本書の解説と批判を通読することでかの哲学の偉人がずいぶんと身近で親しみやすい人物のように感じられるようになったのも大きな収穫だった。 本書を読む前と読んだあとでは、あらゆる事象の見えかたがまるっきり変わってしまっているように感じられる。瑣末で些細なことの本義や裏側が見えるようになって寛容かつ許容範囲が広がったこともあるし、これまで考えもしなかった認識外の事象に気付くようになって見える範囲の拡大(ともすれば見えなくてもいいものまで見えるようになってしまった感)がある。とても清々しい気分だ。 次はぜひ『中動態の世界』を読んでみようと思う。
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