
読書猫
@bookcat
2026年1月30日
マルテの手記
リルケ
読み終わった
(本文抜粋)
“人間はどこからかやって来て、一つの生活を見つけだす。できあいの生活。ただ人間はそのできあいの服に手を通せばよいのだ。しばらくすると、やがてこの世から去らねばならぬ。否応なしに出てゆかねばならぬ。しかし、人々はなんの苦労もいらない。──もしもし、それが君の死ですよ。──あ、さようですか。そして、人間はやって来たと同じように無造作に立去ってゆく。”
“詩は人の考えるように感情ではない。詩がもし感情だったら、年少にしてすでにあり余るほど持っていなければならぬ。詩はほんとうは経験なのだ。”
“僕はもう少し書こう。もう少し書いて、何もかも言ってしまいたい。いつか、僕の手が僕から切り放されて、何か書けと命令すれば、僕の考えもせぬ言葉を書くようなことがあるかもしれぬ。”
“「このごろは、誰も心に願いを持つなんてことはなくなってしまいました。けれども、マルテ、おまえは心に願いを持つことを忘れてはいけませんよ。願いごとは、ぜひ持たなければなりません。それは、願いのかなうことはないかもわからないわ。けれども、本当の願いごとは、いつまでも、一生涯、持っていなければならぬものよ。かなえられるかどうかなぞ、忘れてしまうくらい、長く長く持っていなければならぬのですよ」”
“この世の中には、何一つ想像だけで済ますことのできるものはない。どんなにつまらぬことでも、想像だけで済むものなんか一つもないのだ。僕たちの予想も許さぬ一つ一つの細かなことが無数に存在し、それが集まって、あらゆるものができているのだ。想像だけだと、ただ大急ぎでどしどし走りすぎるばかりだから、つい一つ一つ細かなことは迂闊に見過されて、見過したことにさえ気づかぬことがある。しかし、現実そのものはたいへんゆっくりした流れで、おそろしく多様なものをいっぱい詰めこんでいるのだ。”
