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@nininice
2026年2月6日
美しい日本の私
川端康成
読み終わった
道元禅師と永福門院の和歌を並べて読んでいた。他にも同じような読み方をしている人はいないかと探していたら、この川端康成のノーベル文学賞記念講演「美しい日本の私」が見つかった。彼はそのスピーチの中で道元、明恵、良寛、そして永福門院の和歌を引用していた。
恥ずかしながら、川端康成について殆ど何も知らず、その作品も読んだことがなかった。これは大変良い出逢いだと感じた。以下スピーチに引用されている和歌の一部。
春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり 道元
雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪や冷たき 明恵
形見とて何か残さん春は花山ほととぎす秋はもみぢ葉 良寛
群雀声する竹にうつる日の影こそ秋の色になりぬれ 永福門院
花、ほととぎす、月、雪、すべて万物の興に向ひても、およそあらゆる相これ虚妄なること、眼に遮り、耳に満てり。(略)我またこの虚空の如くなる心の上において、種々の風情を色どるといへども更に蹤跡なし。「明恵伝」より
川端康成の小説『雪国』をこの本の後に読んだ。今までに読んだどの小説よりも、本の中の空気、匂いや湿度、冷たさ、暖かさ、道を歩く足音や、湯気、体温、触感や食べ物の味など、五感で感じ得るものがリアルに印象に残った。
「一輪の花は百輪の花よりも花やかさを思わせるのです」「色のない白は最も清らかであるとともに、最も多くの色を持っています」
彼は古典作品や和歌に置かれた「花」「月」「ほととぎす」「雪」「雀」「竹」「もみぢ葉」のような言葉一つに、鋭く最も多くの花や最も多くの色を見ているような気がする。だからこそ彼の小説の中の言葉一つ一つにも、さりげないけれども驚くほどたくさんの意味がふくまれていて、それがこちらの五感に正しく伝わってくるのだと思った。
秋の野に鈴鳴らし行く人見えず 川端康成
