
feeling good Inc.
@feelinggoodinc
2026年2月3日
ラインズ
ティム・インゴルド,
工藤晋
読み終わった
久しぶりにインゴルドの本を買った。本書の中に出てくるさまざまな「線」は、いずれも別の線からの延長であり、また新しい線の始まりでもある。本書を通してインゴルドは、終わりなく続く線をひたすら辿っていく。そして、読み手にさらに続いていく(ことのできる)線を手渡す。
点から点へと、最短距離で直線を引くことがあらゆる場面で求められ、また良いとされるが、線の引かれ方は必ずしもそればかりではないと彼は教えてくれる。線の途上でふいに開かれる偶然(Googleマップの検索では示されなかった脇道、など)に、なんとなく足を踏み入れてみる。予定より時間はかかるかもしれないけれど、そうして辿った道が人生そのものだと考えれば、「早く着いたから良い/遅く着いたからだめ」といった二元論は、極めて特殊なものの見方のような気がしてくる。
本書は、今ここにいる「自分」も、自分がいまいる「ここ」も、過去から未来へと終わりなく続くたくさんの線の途上だと提示する。「自分」も「ここ」も、お互いがいま関係している限りにおいて現れるのであって、何か確定的で、本来的な在り方を常に表しているわけではないということ。言い換えれば、「自分」や「ここ」が先にあるのではなく、たくさんの線の絡まり合いがたまたま「自分」や「ここ」になって現れている、ということ。
新しい線が続いていくことで、「自分」も「ここ」も必然的に変わっていくのだと思うと、「一人ひとりがかけがえのない存在である」というテーゼの見方も変わってくるように思う。あなたがかけがえのない存在なのは、あなたが他の誰でもないから、とも言えるけれど、本書(が引く線)に沿うと、こうも言えるように思う。あなたがかけがえのない存在なのは、いまここにいるあなたとは、今ここでしか出会えないからだ、と。