
DN/HP
@DN_HP
2025年2月18日

ナショナル・ストーリー・プロジェクト 1
ポール・オースター,
柴田元幸
ちょっと開いた
かつて読んだ
ふと思い出した
「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」でいちばん好き、というか印象に残っているのは「物」というチャプターの「一輪車」という話。ということを唐突に思い出してサッと読んでみる。偶然と言えばそうだけれど、苦境のなかに訪れる向上の兆し、運命、あるいはある種の怪異とも読めるような話。やっぱり好きだった。
それと「瞑想」というチャプターの最後、本編自体の最後に収められた「ありきたりな悲しみ」はエッセイとしても短編小説として読んでも完全に素晴らしい。巧みに書かれた、ラジオに寄り添われて喪失から立ち直ろうとする話がラジオから生まれた本の最後に収められている、というのはわざとらしく出来過ぎな構成な気もするけれど、それもまたひとつの「本当におきた話」として素敵なことだと思いたい。
最近はあまりラジオを聞かなくなった、と書いたばかりだけれど、この話を読んでまた聞きたくなった。これから数日間は文庫本と一緒にポータブル・ラジオもまた持ち歩いてみようと思う。ちょうど昨夜プラグに差し忘れていたイヤホンは充電が切れているし、わたしにもラジオが必要なのだ。
「ラジオの音は私たちの守護天使だ。遍在しつつも慎み深い。我々があれこれ用事を足して動き回るなか、我慢強くついて来てくれる。その粘り強さが、どんなに突然で辛い孤独も慰めてくれる。私たちの心と、遠く離れた壁との隔たりをそれは和らげてくれる。こんなふうにラジオは寛大であり、孤独な人たちには寛大さが必要なのだ」

